日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。戦時下のウクライナから昨年来日し、今年日本で声優デビューを果たしたほど流暢な日本語を話す工藤ディマさんは「日本語の勉強は2回しかしていない」という──。【全4回の第2回】
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それにしても、日本語で分からないことがほとんどないというのはすごい。ディマさんは他の言語も同様に『できた』のだろうか。
「英語は苦手で、学校で14年間やってもできなかった。聞き取りと読むのはある程度できるけど、話せない。私、あまり勉強も得意じゃないです。大学での日本語の勉強も、簡単に言うとあきらめた。ネズミ色って感じで面白くなかったし、行動力もわかなかった。なんで毎回同じことを繰り返してやらなければならないんだろう? と疑問を抱いて先生とケンカになったりもしました。私、結構自分の思ってること、顔に出るから。大学の日本語じゃなく『日常の日本語』に熱心だったから、家で独学でやるのが合ってた。
日本語に関して勉強と言える勉強をしたのは、多分人生で2回。日本語能力試験のN3とN2を受けるため。(注:N3は日常生活に必要な日本語を理解できるレベルで、N2は新聞記事やニュースをほとんど理解できるレベル。一番上はN1。)試験も、やっぱり耳を頼ってますね。『耳にすっかり入る』かどうか。重たいなら正しくないと判断する。文法のテストもそうやって耳に任せてるところがある」
『耳にすっかり入る』というディマさん独特の表現は、おそらく『記されている言葉を音にしたとき、頭の中で違和感なく響く』という意味なのだろう。『重たい』は、違和感がある時。聞き取りが育てたセンサーがディマさんには備わっているのだ。
でも、当然だがテストは漢字表記がある。ひらがなとカタカナは2週間で覚えたとのことだったが、漢字はどうだろう?
「ひらがなばかりの文章だと、まぜまぜになって見えるから『ん?』って思う。漢字は好きです。逆に漢字がないと読めない。漢字知ってる言葉がひらがなで書かれていたら、もう分からない。
でも、読み方は結構忘れるほうなので、意味分かっても、『読み方何だっけ、何だっけ』ってなることがあります」