ライフ

キーウ出身の声優ディマさんが「読解のテストだけは0点」だった納得の理由【連載「日本語に分け入ったとき」】

工藤ディマさん

工藤ディマさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。戦時下のウクライナから昨年来日し、今年日本で声優デビューを果たしたほど流暢な日本語を話す工藤ディマさんは「日本語の勉強は2回しかしていない」という──。【全4回の第2回】

 * * *

 それにしても、日本語で分からないことがほとんどないというのはすごい。ディマさんは他の言語も同様に『できた』のだろうか。

「英語は苦手で、学校で14年間やってもできなかった。聞き取りと読むのはある程度できるけど、話せない。私、あまり勉強も得意じゃないです。大学での日本語の勉強も、簡単に言うとあきらめた。ネズミ色って感じで面白くなかったし、行動力もわかなかった。なんで毎回同じことを繰り返してやらなければならないんだろう? と疑問を抱いて先生とケンカになったりもしました。私、結構自分の思ってること、顔に出るから。大学の日本語じゃなく『日常の日本語』に熱心だったから、家で独学でやるのが合ってた。

 日本語に関して勉強と言える勉強をしたのは、多分人生で2回。日本語能力試験のN3とN2を受けるため。(注:N3は日常生活に必要な日本語を理解できるレベルで、N2は新聞記事やニュースをほとんど理解できるレベル。一番上はN1。)試験も、やっぱり耳を頼ってますね。『耳にすっかり入る』かどうか。重たいなら正しくないと判断する。文法のテストもそうやって耳に任せてるところがある」

『耳にすっかり入る』というディマさん独特の表現は、おそらく『記されている言葉を音にしたとき、頭の中で違和感なく響く』という意味なのだろう。『重たい』は、違和感がある時。聞き取りが育てたセンサーがディマさんには備わっているのだ。

 でも、当然だがテストは漢字表記がある。ひらがなとカタカナは2週間で覚えたとのことだったが、漢字はどうだろう?

「ひらがなばかりの文章だと、まぜまぜになって見えるから『ん?』って思う。漢字は好きです。逆に漢字がないと読めない。漢字知ってる言葉がひらがなで書かれていたら、もう分からない。

 でも、読み方は結構忘れるほうなので、意味分かっても、『読み方何だっけ、何だっけ』ってなることがあります」

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト