高濱氏もこう話す。
「米国内の世論調査では、ツイッター買収時のマスクの経営手法は、『グッド』が37%、『バッド』が27%、『わからない』が19%。強引な手法への評価は分かれました。
しかし好感度は『非常にいい』53%、『どちらかと言えばいい』37%と高く、内訳は共和党支持層74%、民主党支持層40%。別の世論調査でも共和党支持層63%、民主党支持層9%、白人男性57%がマスクに好感を持っていた。これはトランプ支持層と重なります。思ったことをズバズバ言うところはまさにトランプ流と言えるでしょう」
従うのは物理法則のみ
マスク氏とトランプ氏の接近は米国社会を根底から変えかねない。どちらも規制を嫌い、既得権益層をぶち壊すことに躊躇がないからだ。
伝記ではマスク氏が掲げる5つの戒律が紹介される。そのひとつめが「要件はすべて疑え」。
要件とはいわば業界の規定のことで、ロケット打ち上げにしろエンジン部品の製造にしろ、「こういう要件が定められています」と部下が進言しようものなら、その場は地獄になる。
マスク氏は要件がいつどこで、誰が定めたものかを個人名レベルまで問う。答えられなければクビである。
仮に答えたとしても、要件には従わない。それが法律であってもだ。マスク氏が守る要件は、〈物理法則に規定されるもの〉だけだと著者のアイザックソン氏は書く。
スペースXのロケット打ち上げの際に、こんな一幕があった。
米国では連邦航空局(FAA)が定めた天候のガイドラインなどすべての要件を満たさないと打ち上げができない。2020年末の打ち上げ時には、高層の風が強いとしてFAAは許可をしなかった。だがマスク氏は無視して打ち上げ、成功。その後、FAAから2か月間の試験禁止を命じられた。