ビジネス

すでに運転士が1万人不足 路線廃止が続くと予想されるバスは「公営にするしかない」のか

繁華街を走る路線バス(イメージ、時事通信フォト)

繁華街を走る路線バス(イメージ)

 自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで発生する「2024年問題」は、主に物流業界の問題として語られることが多い。だが、それよりまえに危機を迎えているのが公共交通機関の運転者不足だ。なかでも、首都圏でも路線バスは人手不足から減便をせざるを得ない事態に陥っている。社会や経済の移り変わりと人々の暮らしを記録しつづける日野百草氏が、路線バス存続の危機についてレポートする。

 * * *
「日本中、バスなんて走るだけ赤字の路線ばかりだ。安い運賃でいくら運んでも儲けがでない。町から補助金が出たって儲からない仕事はしたくない、運転士だって薄給激務で大勢の命なんか預かりたくない。本音はどこも限界だと思う」

 元バス運転士で現在は福祉施設のドライバーをしている男性の話、話のきっかけは大阪の金剛バスが路線バス事業を廃止すると発表したことだ。主に富田林、太子、河南、千早赤阪などを結ぶ路線だが、太子町と河南町はこの金剛バスが唯一の路線バスとなる。金剛バスはこの4つの自治体からの補助金を断って廃業を決断した。

「補助金を貰ったところで儲からない仕事をする道理はない。それに協力してもらっても肝心の運転士を連れてきてくれるわけでもない」

 バスの運転をできる人が消え始めた。信じられない話だが、事実である。なお本稿、本旨ではないバス業界の専門用語や会社によって異なる事例などは平易に置き換えている。

時給換算すると最低賃金を下回ることもある

 少子化と人口減、労働人口縮小にこれまでの現場に対する冷遇が、その悪化に拍車をかけている。

「もう金の問題ですらなく、誰もバスの運転士なんてやりたがらないし、バスの運転をできる人も日本から消え始めている。みんな見て見ぬふりで、取り返しのつかないことになり始めているように思う」

 実際に営業レベルで仕事のできる運転士は急速に減っている。日本バス協会の聞き取り調査によれば、全国のバス会社では1万人のバス運転士が不足しているという。778社の回答だが、試算では2030年度には3万6000人ものバス運転士が不足する。つまり、ほとんどバスを運転する人がいない国になる可能性がある。

「大型二種の免許自体は絶対ではないが取ろうと思えば取れる。金も時間もかかるが取れる。しかし、それと現場に出せるかは別問題のように思う」

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
フジテレビの取締役候補となった元フジ女性アナの坂野尚子(坂野尚子のXより)
《フジテレビ大株主の米ファンドが指名》取締役候補となった元フジ女性アナの“華麗なる経歴” 退社後MBA取得、国内外でネイルサロンを手がけるヤリ手経営者に
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン