2023年10月1日から暮らしにまつわる様々なことが変わる。新型コロナウイルスの患者への支援が廃止され、改正酒税法が施行されてビールの価格が下がり発泡酒が上がる。そして、インボイス(適格請求書)制度が始まる。反対の声が大きくなるなか、何がどうなるのか「よく分からない」という気持ちでニュースを見ているのがほとんどの人たちの本音かもしれない。人々の暮らしに現れる社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、中小事業者の経理担当者たちにインボイス制度への本音を聞いた。
* * *
「大企業はわかりませんが、中小企業の経営者も経理担当も、インボイスはうんざりじゃないですか」
関東の中小企業に勤める経理担当者は「この先を考えると逃げ出したくなる」とまで話す。
「被害者はフリーランスだけじゃないですよ、会社員、とくに経理や総務、営業だってこれからどうなるか想像もつきません」
影響は個人事業主や自由業といったフリーランスだけではない、と筆者の旧友が声を上げたいと話してくれた。インボイス(適格請求書)制度そのものについては各社大きく報道されているため本稿は置くが、フリーランスだけの話かと思っていたら大変なことになった、という会社員は少なくないようで、実態が明るみになるにつれSNSなどを中心にそれまでの捉え方とは違った反応が多く見られるようになった。
「それはそうですよ。領収書だけでも登録業者かどうか、処理が合っているか調べるんです。飲み屋の領収書とか厳密にやってたら無理ですよ」
インボイス導入最大の問題は税負担だけでなくフリーランス、法人企業問わず事務手続きの膨大な負担とされる。もちろん企業によって、個々人によってその立場も、その印象も様々だろう。
「はっきりいって、労力と時間の無駄だと思います」
インボイスを導入しないからと切れない
実際、会計管理サービスを手掛けるIT企業の調べによれば、インボイス制度により日本全体で月1400億時間、月3400億円の負担増となるとする調査もある。
政府によればインボイスによる国の税収アップは年間で約2500億円とされるので、増税のために経済活動を疲弊させてしまうことにも繋がりかねない。一例として、経費の物品購入も接待も「インボイス番号はあるか」を問い合わせなければ購入不可とする予定の企業もある。なぜならインボイス番号がなければ基本、購入した企業が納税しなければならない。なんだかインボイス制度、トランプのババ抜きのババというか、人気ゲーム『桃太郎電鉄』シリーズでなすりつけ合う迷惑キャラ「ボンビー」みたいだ。