来る2024年、巨人は球団創設90年を迎える。その節目の年に、現ヘッド兼バッテリーコーチの阿部慎之助氏が監督に就任する。長い歴史のなかで14人の監督が指揮を執ったが、捕手出身の監督は2代目の浅沼誉夫氏以来。2リーグ制となった1950年以降では初となる。
野村克也氏はじめ、森祇晶氏、梨田昌孝氏、伊東勤氏ら捕手出身者は野球をよく知っている「名監督」のイメージがある。スポーツ紙編集委員はこう話す。
「V9時代の正捕手だった森祇晶氏が川上哲治監督の後継者として巨人の監督に就任していればジャイアンツの歴史は変わったはずだ、と話す巨人OBも少なくない。森氏は西武で監督をした9年間でリーグ優勝8回、うち日本一に6回も輝いている。
森氏は広岡達朗監督が3度目のリーグ優勝をして退いた後、ヘッドコーチからの昇格で監督に就任した。チーム事情を知り尽くす森氏は、1年目に日本一に輝くと3年連続日本一に。4年目は3位に終わったが、翌年には再び日本一に輝き、その後は日本一3回を含むパ・リーグ史上初の5連覇を達成した」
捕手出身でヘッドコーチからの昇格ということでは阿部新監督と共通しているが、大きく違うのは西武の森氏がリーグ優勝したチームを引き継いだのに対し、巨人は2年連続Bクラスに低迷するチームだということ。阿部新監督は名門球団を再建できるだろうか。
キャッチャー出身の指揮官の「落とし穴」
同じ捕手出身者として広島の監督を務めた達川光男氏。5位に低迷した三村敏之監督の後を受けて監督に就任したが、2年続けて5位と下位から抜け出せなかった。達川氏は「捕手出身監督には落とし穴がある」と話す。
「どうしてもキャッチャーのリードに目が向いてしまう。自分の現役時代のリードとついつい比較するんよ。キャッチャー陣も監督が元捕手ということでベンチに目が気になる。
特に現役時代の阿部は4番で正捕手だった。しかし、今の巨人を見ると『4番・阿部』の代わりとしては岡本(和真)がいるが、『捕手・阿部』に代わる存在はいない。大城(卓三)、岸田(行倫)、そして小林(誠司)にしてもリード面は物足りない。そこを阿部監督がどれだけ我慢できるだろうな。
ボクが現役の頃は“ベンチと野球するな。相手としろよ”と監督から言われたものです。今の巨人のキャッチャー陣が、阿部がやってきたインサイドワークに追いつくわけがない。そこを阿部が理解し、試合へと送り出すキャッチャーに“オレと野球をするなよ。お前たちが思った通りにやってこい”と送り出せる度量があるかだろうね。そこが一番のポイント。意識していたつもりだったが、ボクはそこがうまくできなかった」