「メインディッシュの薬」は減らさない
減らしやすい薬の特徴として多くの医師が口を揃えたのは「予防的にのむ薬」だった。北品川藤クリニック院長の石原藤樹さんが解説する。
「減薬のファーストステップとして検討すべきは、『病気予防のためにのんでいる薬』です。いまある症状を緩和したり治療したりする薬は服用を中止すれば体に大きな影響が出ますが、予防のためにのむ薬は相談次第で減らすことができます。
例えば、降圧剤を服用している場合、上の血圧が200mmHgを超えるような重症の高血圧なら、脳出血などのリスクが高いので薬は必須だといえます。しかし、上の血圧が140mmHg程度なら、差し迫った病気の危険はなく、将来の心筋梗塞などの予防がその主な目的です。後者の場合は、生活習慣の改善などによって減薬することは難しくありません」
高血圧や糖尿病の治療を目的として複数の薬をのんでいる場合も減らしやすいと大橋さんが続ける。
「高血圧の治療では、カルシウム拮抗薬や利尿剤など複数の種類を併用している人が多い。血圧が安定しているなら、1種類にすることを考えてみてもいいでしょう。糖尿病も同様に、複数の薬を服用している場合、1種類ずつ減らしていくことは可能です。
コレステロール値を下げる薬や、胃の粘膜を守る作用の胃薬なども、中止したからといってすぐに病気になるわけではありません。そうした薬は病気の治療において『メインディッシュ』ではなく『添えもの』のようなもの。減らしても差し支えないケースがほとんどです」(大橋さん)
日本初の「薬やめる科」を設けた松田医院和漢堂院長の松田史彦さんも、「コレステロールの薬はリバウンドもなく、もっともやめやすい」と首を縦にふる。
「基準値は気にしないことです。一方、降圧剤は急にやめるとリバウンドで血圧が急激に上がることがあるので、徐々に減らしていくべきです。糖尿病の薬は食事、運動を見直しながら、厳しすぎる基準値を気にせず、HbA1C8以下を目安にゆっくり減薬してください。
『つらい症状を緩和する薬であるかどうか』も、見極めの大きなポイント。その点で言えば、生活習慣病はただちに体に負担がかかるような症状が出る事例は少ないといえます。体の不調をこれといって自覚していないのに多くの薬をのんでも意味はなく、症状を見ながら減らすことができます。
一方で、鎮痛剤や花粉症の薬、便秘薬、頭痛薬などは一時的ではありますがつらい症状を緩和してくれるため、痛みをがまんしてまで無理に減らす必要はありません」(松田さん・以下同)