「50才ちょうどで受けたパート先の健康診断でひっかかって以来、6年にわたって朝晩2回、コレステロールの薬と降圧剤を合わせて4錠のみ続けています。それに加えて最近、医師に“雨が降ると頭痛がする”と伝えたら頭痛薬と、その副作用で出るかもしれない胃痛を抑えるための胃薬を処方されたりして、最近はのまなければならない薬が全部で6種類になりました。
以前、雑誌で『6種類以上の薬は体に悪い』と書いてあったのを読んだのですが、このままのみ続けても大丈夫なのでしょうか……?」
都内在住の主婦・Kさん(56才)は、不安を感じながら薬を口に運ぶ日々を送っている。Kさんのように、年を重ねるとともに薬の服用量が増加するケースは少なくなく、厚生労働省の発表によれば40〜64才では半数以上の人が3種類以上の薬を処方され、75才以上になると4割の人が5種類以上の薬をのんでいる。
そうした現状に加え、6種類以上を服用すると薬が原因でふらつきや転倒骨折、腎障害などが起きるリスクが上がることも明らかになっており、近年薬ののみすぎは「ポリファーマシー(多剤併用)」と名付けられ、医療界における大きな問題として取りざたされている。
病気を治すためにのんだ薬に体を蝕まれる“不都合な現実”を前に、すぐにでも薬の種類を減らしたいと考える人は多いだろう。しかし、多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹さんはやみくもな減薬はかえって危険だと警鐘を鳴らす。
「“薬”と一口に言っても、効果の強弱や副作用の有無、治療における重要度まで特徴は千差万別です。そのためどんな薬が減薬に向いていて、どう減らせばいいか、きちんと考える必要があるのです。その際、医師が積極的に取り組むことも必要ですが、何よりも“減らしてみたい”という患者本人の意欲があってこそ、進めることができる。
だから、まずはいま自分がどんな薬を、なんのためにのんでいるのかを知り、どの薬ならば減らしても問題がないかを考えることが、減薬への近道になります」
それではどの薬をどう減らせば、安全かつ迅速に減薬を実践することができるのか。専門家たちの意見に耳を傾けてみたい。