埼玉県議会で議論されている県虐待禁止条例改正案が波紋を広げている。同案は自民党埼玉県議団が提案し、10月6日の県議会福祉保険医療委員会で自民・公明の賛成多数で可決された。
その条例改正案の要点を端的に記して問題提起したのが、子育て関連の社会起業家として知られNPO法人フローレンスの会長を務める駒崎弘樹氏だ。同氏はXにこう投稿した。
〈埼玉県自民党が出した「子どもだけの登下校禁止。お留守番禁止。おつかい禁止。それを見つけた人は通報義務」という頭おかしい条例が来週13日に採決されます。〉
条例改正案では、小学3年生までを「子ども」として、その放置や置き去りを禁じるとされており、具体的には「短時間でも子どもに留守番させること」「子どもだけで公園で遊ばせる」「子どもにお使いをさせる」ことなどが禁止行為にあたると想定されている。さらには、「子どもだけで登下校させる」「子どもを家に置いてゴミ捨てに行く」ことまで“放置”にあたると説明されている。
罰則規定はないものの、小学校4~6年生についても放置や置き去りにしないことは「努力義務」とされ、放置しているのを見つけた場合は「通報」することも義務として課される。子どもだけで公園で遊んでいるのを見たら110番──ということらしい。
ネット上ではこの条例改正案に対する批判が噴出。Xなどでは〈シングルマザーはどうすればいいんだ〉〈共働きなんてできない〉〈毎日学校まで手をつないで行けと? 帰りも迎えに行けと?〉〈子育てしたことないジジイが考えた条例だな〉などといった厳しい意見が出ている。
実際に埼玉県民はどう受け止めたのか。大宮駅や浦和駅近くで聞いた。
5歳になるという子どもを連れていた30代夫婦の男性は、「その条例案は知らなかった」と答えた上で、こう語った。
「厳密に守らないといけないとすれば、とても厳しいですね。いまは保育園でどちらかが送り迎えをしているので子どもを1人にすることはないですが、共働きなので小学校に上がったら学童保育に通わせようと思っています。そこからは1人で帰ってくることになると思いますが、それも禁止となると……。
あと、マンションのゴミ捨て場は1階にあって、子どもがテレビを見ているときなどに1~2分だけ残してゴミ捨てに行くことはあります。それも虐待だと言われると、子育てしていることが悪みたいですね」
小学2年生の男の子を連れて買い物に来ていた母親はこう話す。