設備の更新が環境負荷の低減にもつながることは、家電を新しくしたら電気代が安くなった体験などで理解がすすんでいるだろう。鉄道会社も同様で、とくに新車両導入は速く走るといった性能向上だけでなく、CO2削減などの効果も得られる。ライバル企業でもある他の大手私鉄から中古車両を購入することを決めた西武鉄道の事例から、ライターの小川裕夫氏が鉄道の3R(リユース・リデュース・リサイクル)についてレポートする。
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2023年9月26日、西武鉄道は鉄道車両を東急電鉄・小田急電鉄から譲受することを発表。これが、鉄道関係者やファンを驚かせている。
鉄道業界において、他社から中古の鉄道車両を購入することそのものは珍しくない。例えば、東京メトロ銀座線や日比谷線の車両は、熊本県熊本市・合志市を走る熊本電気電鉄に、南海電気鉄道の車両が銚子電気鉄道へと譲渡されている。
しかし、これら中古車両を購入する鉄道事業者は地方の中小私鉄もしくは旧国鉄線から転換した第3セクターの鉄道事業者というのが一般的だった。それは鉄道車両が高価ゆえに、収支的な面から新造することが難しいという事情による。中古車両を購入すると、輸送費や補修の費用がかかるものの、それでも新造するよりも圧倒的に安価で済む。
他方、JR東日本・東海・西日本や大手私鉄は、自社で鉄道車両を新造してきた。今回、東急・小田急から中古車両を購入することを決めた西武はれっきとした大手私鉄だ。しかも、東急・小田急は東京圏で西武と競い合っている。なぜ、西武はライバルともいえる東急・小田急から中古車両を購入することにしたのか?
「今回、東急・小田急の2社から中古車両を譲受することを決めたのは、弊社が取り組むCO2削減目標を達成するためです。CO2を削減するためには、使用電力の少ない車両へと置き換える必要があります。弊社は自社で車両を新造し、電力使用量の少ない車両も製造していますが、今の製造ペースではCO2の削減目標を達成できません。そうした中、弊社の車両置き換え計画と東急・小田急2社の計画が合致したので、約100両の中古車両を購入することになったのです」と説明するのは、西武鉄道広報部の担当者だ。
購入予定の東急9000系と小田急8000形は、いずれも1980年代に導入が始まり通勤車両として活躍してきた車両だが、従来より省エネルギー化している。置き換えられる西武の車両はそれよりも古い型なので、CO2削減効果が見込める。税制では電車の減価償却期間は13年だが、通常の車両は寿命が30~40年というのが相場だ。さらに、メンテナンスによって相場より長く使用している実態がある。