ライフ

【藤井聡太「八冠制覇」へ】写真特集・将棋カメラマンがとらえた「スター棋士の系譜」 藤井名人誕生まで40年にわたって最年少名人記録を保持した谷川浩司の「本音」

名人・A級連続32期の大記録を持つ谷川浩司

名人・A級連続32期の大記録を持つ谷川浩司

 将棋界の史上最年少記録を次々と塗り替えてきた藤井聡太竜王・名人。10月11日、永瀬拓矢・王座との王座戦第4局に勝利すれば「八冠保持者」となり、羽生善治・九段(日本将棋連盟会長)以来の「全冠達成」となる(羽生は1996年に当時の七冠独占で達成)。まさに「将棋界の歴史」が変わる瞬間が目前に迫るなか、半世紀にわたってプロ棋士たちの活躍と日常を写真に収めてきた大ベテラン写真家の著作『将棋カメラマン 大山康晴から藤井聡太まで「名棋士の素顔」』(小学館新書)が話題だ。

 写真家・弦巻勝氏が、名棋士の知られざる逸話を貴重な写真とともに振り返る同書より、1983年に「史上最年少名人」となった谷川浩司の少年時代から、年下のライバル・羽生善治との激戦の裏側、表情に円熟味を増した現在までを紹介する。

 * * *

18歳の谷川。史上2人目の中学生棋士として話題を集めた

18歳の谷川。史上2人目の中学生棋士として話題を集めた

谷川浩司が「天才少年」だった頃

 藤井聡太さんの登場によって、将棋界の最年少記録は次々と塗り替えられている。その多くは羽生善治さんが打ち立てたものだったが、羽生さんでも達成できなかったのが谷川浩司さんの持っていた「史上最年少名人」の記録更新だった。

 1976年に中学生で棋士デビューした谷川さんは順位戦の1期目こそ昇級を逃したものの、その後は4年連続で順位戦昇級を果たし、A級入り1期目で名人への挑戦権を獲得。1983年に加藤一二三・名人を破り、21歳2ヵ月の若き名人となった。2023年に藤井聡太さんが20歳10ヵ月で名人になるまで、この最年少記録は実に40年も破られなかった。

 僕が初めて谷川さんを撮ったのは、彼が18歳だった1980年。当時は六段ながら、すでに次世代の将棋界を担う逸材として注目されていた。

 谷川さんの実家は神戸のお寺で、お兄さんは東京大学に進学した秀才。実家には子供時代に使っていた将棋盤と駒が残されており、駒には無数の「歯型」が残されていた。兄に負けた谷川少年が悔しさのあまり駒を噛んだというエピソードは、あまりに有名である。

 高校生だった谷川さんとどんな話をしたのか詳しくは思い出せない。ただ、スターの原石が放つ「オーラ」は、当時の写真からも伝わってくる。僕は谷川さんという棋士をどう撮ったらいいのかイメージできず悩んでいた。あるとき『将棋世界』の先輩カメラマン・中野英伴さんに相談してみたところ、こう言われた。

「弦巻君、僕も同じだよ」

 驚いたような安心したような、不思議な気持ちだった。

デビュー間もない頃の谷川

デビュー間もない頃の谷川

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン