【週刊ポスト連載・医心伝身】機能性ディスペプシア(FD)は慢性的な胃もたれや痛みなどの症状があるのに、胃カメラや血液検査では異常が確認できない疾病だ。そのため患者は周囲に理解されず、仮病を疑われることもある。そこで食事画像と脳の血流からストレスを数値化する研究を実施。その結果、FDの脳活動は食事画像を見ただけで亢進し、ストレスを感じて症状を誘発することが証明された。
ディスペプシアとは胃もたれや胃の痛みなど、腹部の不快な症状を示す医学用語だ。機能性ディスペプシア(FD)は、はっきりとわかる病変や異常がないのに、これらの慢性的症状が続き、胃の機能が悪くなった状態を指す。
FDは現在、日本人全体の約10%と推計され、QOL(生活の質)にも影響するため適切な診断と治療が求められていたが、適正な検査法がなく、それが問題となっていた。
川崎医科大学健康管理学の勝又諒医師に聞く。
「FDの原因は、はっきりとわかっておらず、心理的ストレスや脂肪分の多い食事が原因の一つと考えられていました。そこで脳の活動と食事の関係を数値化することにより、ストレスを見える化できるのではと考え、研究をスタートさせたのです」
その研究では事前に40人の健常者に対し、食品の脂肪含有量を元にした脂っこいもの、あっさりしたもの、その中間のもの100枚の食事画像を見せるアンケートを行ない、その中から研究に必要だと判断された40枚を選び出した。次に空腹状態の健常者16人とFD12人を対象に脂っこいもの、あっさりしたもの、中間のものが写っている食事画像を見てもらった。そして、画像1枚につき、7秒ずつ見せた時の脳の活動の変化と見た時の気分(好き嫌い)も0~100点で答えてもらい、比較検討を積み重ねた。
脳の機能については川崎医療福祉大学リハビリテーション学部視能療法学科の細川貴之准教授の協力のもと、光トポグラフィーを使用しての検査を実施。これは額にセンサーを約20個貼り付け、近赤外線照射による血中ヘモグロビンの量から前頭葉の活動を測るもので、MRI検査と違い場所を選ばず、患者に負担をかけずに脳活動の測定が可能となっている。