スキャンダルが明るみに出たとき、その解決としてキャンセルカルチャーで終わらせない努力が、同じ時代を生きる私たちには必要だろう。現在、長年にわたる性加害問題で世の中の関心を大きく集めているジャニーズ事務所はかつて、近年の支配的なイメージとは少し異なる存在だった。名も無き人たちの生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、古くアニメ放映で芸能事務所と、ジャニーズと仕事で関わった元テレビマンが見えていたもの、について聞いた。
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「ジャニーズ事務所はとてもよく話を聞いてくれた。当時の私からすれば『天下のジャニーズなのにありがたい』という思いでした」
彼はかつて、社員としてテレビのアニメーション放映に携わった。すでに会社は定年、年齢的にも現場から遠ざかって久しいが、かつてはサラリーマンという裏方としてテレビアニメを支えた時代があった。
もちろん、小さいながらもジャニーズ事務所との仕事もあった。
「いまでは考えられないでしょうけど、昔は『アニメの仕事なんて』という芸能事務所が多かった。声優を露骨に差別するような芸能人だっていた。収録でも『あの人(声優)たちとは別で』なんて芸能人もいた」
テレビアニメを放送していても同じ局の情報番組から無視される時代
こうした光景はとくに1990年代くらいまでだろうか。
「ギャラやスケジュールの問題もありますが、主に理屈でない『格』の問題ですね」
昼のバラエティに声優がレギュラー出演するいまとなっては想像できない若者もいるかもしれないが、声優という仕事が芸能人より下、むしろ芸能人になれなかったから声優、と決めつけられ、蔑視された時代は間違いなく存在した。それはベテラン声優からエッセイやトークなどで語られることもある「事実」である。もちろん楽曲提供やタイアップなどは別で古くからあったが「声の仕事」となると話は別、いまやなりたい職業ランキング上位の声優という仕事、いまの若者が思うよりずっと「格下」にされてきた「史実」がある。
それがいまや「アイドルより声優」という志望者、むしろアニメの声優になりたいがためにまずはアイドル活動、という志望者もいる。
「そういう時代でもジャニーズ事務所はちゃんと話を聞いてくれた。作品にもよりますが、他の大手芸能事務所に比べれば『とても話しやすい事務所』だったと思います」