いかに名医といっても、寄る年波には勝てない部分もある。各分野の名医のなかには、多くの患者と同じように血圧の上昇に悩み、「降圧剤」を服用している人もいる。
専門的な薬の知識を持つ医師は、どんな薬を服用しているのか。
夏と冬で服用量を調整
内科医の上昌広医師(医療ガバナンス研究所理事長)は、50歳を過ぎた4年前から服用を始めた。上医師が選んだ薬はカルシウム拮抗薬のアムロジピンベシル酸塩5mgだ。
「父も祖父も血管性の病気で亡くなっており、私も脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高いと感じて飲み始めました。朝1回2.5mgからスタートしましたが、もう少し効果がほしかったので5mgに増やして維持しています」
高血圧の第一選択薬としてよく処方されているアムロジピンベシル酸塩5mgを選んだのには、こんな理由があった。
「降圧効果が出やすく、副作用も軽くて薬価が安い。何より現役のドクターにとっては昔から使い慣れている。同じくよく処方されるARBのバルサルタンを使った時期もありますが、併用しても変化が少なかったのでやめた」(同前)
上医師は今後、服用する量を季節ごとに調整していくつもりだという。
「血圧は夏場下がり、冬場は上がる傾向がある。夏場はアムロジピンベシル酸塩1錠で血圧をキープできますが、冬だけバルサルタンを併用することを検討したい」
泌尿器科医の永井敦医師(川崎医科大学附属病院病院長)はカルシウム拮抗薬のアムロジピンベシル酸塩5mgを朝夕1錠と、ARBのバルサルタン80mgを夕1錠、服用中だ。
「10年ほど前、55歳頃から健診で高血圧を指摘され、同僚の高血圧内科の医師に相談してバルサルタン(当時はディオバン)の服用を始めました。論文不正事件(注:製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「ディオバン」の臨床研究において、複数の論文不正が発覚し、撤回に追い込まれるなどした)の前でもあり、心筋梗塞や脳卒中になりにくいとされていたので選びました。その後、59歳頃からアムロジピンベシル酸塩も併用しています」(永井医師)
さらに降圧目的が主ではないが、自身の専門である泌尿器科領域の前立腺肥大症治療薬・タダラフィルの服用も寄与していると考えている。
「タダグラフィルは血管拡張作用により降圧剤との併用で血圧が下がりすぎるリスクがあるため、専門医に相談し数値を見ながら併用しています」(同前)