男性の上にクマがのしかかり、耳たぶを裂いた
自宅玄関前でクマに襲われた70代男性は病院で治療を受けていて、妹が取材に応じた。
「まだ本人からは詳しい話が聞けていないのですが、足を引っ掻かれて、上半身も耳たぶが裂けてプランプランしている状況と聞いています。私が騒動に気づいて、家の外に出た時には襲われた人が各々に救急車を呼んだようで、4?5台救急車が列になって並んでいました。クマは雄物川を渡っているのを見た人がいると聞いたんで、向こう岸からこっちに渡ってきたんでしょうか」
この70代男性を助けた60代男性は間一髪の瞬間をこう振り返る。
「『クマが出たよ』と言われて道に出たら、男性が倒れていてその上にのっかかっているクマが見えた。これはマズいと思って、すぐに近くにあった大きい剪定ばさみを2本持って『コラッ!』と大声で叫んだら走って逃げていきました。こっちに向かってきたらやられると思いました」
4人が被害にあった現場は、日本海が目と鼻の先にある住宅街。おまけに警察の運転免許センターの裏で、人通りも少なくない。
秋田県ではクマによる人身被害の件数が過去最高となっている。例年は10件に満たなかったが、今年は10月10日時点で33件発生し、37人が被害に遭った。(秋田県警によると10月5日までの時点で目撃件数は1648件)。10月4日にも今回の現場から車で1時間ほど、60キロ以上離れた美郷町で、畳店の作業小屋に親子とみられるクマ3頭が侵入。そのまま居座ったため餌を入れた檻を設置し、翌朝に捕獲。町は猟友会に依頼して駆除したのだが、これに対して県庁などに全国から『なぜ殺すのか』や『可哀想だ』など、という多くの苦情が寄せられることが報じられ、メディアやSNSで話題を呼んだ。
こうした住宅街に侵入したクマの対応について、実際に襲われた身として、どう感じるのか。
「今回のクマはまだ1メートルぐらいで成獣ではなかったと思うけど、実際に襲われてはじめてクマの危険性が身に染みました。近くに保育園とかあった場合、(クマが)可哀想とか言ってられないよね。もちろんなんでもかんでも、殺すというのは違うと思いますけど、今回やこの前報じられていた(前出の美郷町の件)住宅街に降りてきたケースではしょうがないと思います」(前出・80歳男性)
10月は冬眠のためのエネルギーを蓄える時期で、今後もクマが餌を求めに住宅街に侵入するケースが増えてくると見られている。県内の猟友会の会員は「今後警戒を強めてパトロールを増やしていくことになると思うが、クマの出現は早朝から日没までと幅広く、限界もある」と苦しい胸中を吐露した。