降圧剤や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の様々な薬を同時に服用する「多剤併用」は多くの患者にとって悩ましい問題だ。
厚労省の最新統計(社会医療診療行為別統計=2022年調査)によると、「7種類以上の薬」を院外処方された人は65~74歳で12.7%、75歳以上では23.8%と、高齢になるほど割合が高かった。
かかりつけ医も把握できない
持病や身体の痛みなどが増える高齢者ほど、複数の医療機関を受診する機会が増えていく。多摩ファミリークリニック院長の大橋博樹医師(内科)が言う。
「患者さん自身が『おくすり手帳』などを持ってきてくれれば、ほかの医療機関で処方されている薬が何かを把握できますが、手帳を忘れたり、うまく管理できない患者さんが多いのが実情です」
目の前の患者が服用するほかの薬を把握できないまま医師が新たな薬を処方することで、薬の添付文書に「併用注意」と書かれた組み合わせが処方されることがある。
医師や薬剤師が処方する際に、電子カルテなどの画面上に「併用注意」のアラートが表示されるが、処方が複数の医療機関にまたがる場合は把握が困難になる。
患者自身の身体に合うものを選び、なるべく種類を減らす必要があるのは、降圧剤でも種類が異なる場合は「飲み合わせ」にリスクがあるからだ。
「高血圧の場合、カルシウム拮抗薬だけで効果が十分でなければACE阻害薬を併用するなど、複数の降圧剤を組み合わせることはあります。ただし、その場合は血液検査で様々な数値を測定し、症状の変化を見るなどモニタリングをしっかり行なわなければいけません」(大橋医師)