2019年7月に起こった京都アニメーション放火殺人事件で、現住建造物等放火や殺人などの罪に問われている青葉真司被告(45)の裁判員裁判が9月から京都地裁(増田啓祐裁判長)で続いている。10月11日の第12回公判では被告人質問が行なわれた。
ガソリンを用いて放火するという被告の行為により36人が死亡し、32人が重軽傷を負ったが、当の青葉被告は法廷で「2〜3人か7〜8人くらいの死傷者だと思った」などと述べた。
被告はこれまでの公判で、事件の動機として京都アニメーションが主催するコンクールに応募した自身の小説を「京アニにパクられた」と、同社によるアイデアの盗用があったという趣旨の発言をしているが、八田英明社長はこれを否定している。弁護人は被告が事件当時に妄想の影響で心神喪失もしくは心神耗弱状態にあり、無罪か罪の減刑がなされるべきだと主張している。
今回の被告人質問ではまず「被告が当時認識していた現場スタジオ内の人数」について質問がなされた。傍聴席と証言台の間、そして証言台と検察側席の間に透明なアクリル板が立てられ、準備が整うと、拘置所職員から車椅子を押され、青葉被告が法廷に現れた。
事件で被告自身も全身に大火傷を負った影響か、短く切り揃えられた坊主頭には一部毛髪のないところがある。車椅子に乗せられたまま、上半身だけぺこぺことしきりにお辞儀をしながら証言台の前に移動した。肌がただれていると報じられていたが、長い勾留生活のためか色の白さのほうが際立つ。
弁護人から、当時スタジオには何人のスタッフがいたという認識を持っていたか尋ねられると、青葉被告はこう答えた。
「いやぁ〜、ちょっと自分も、かなり〜、まぁ、急いでガソリン撒いて出てきたので、完全に覚えてるわけではないんですがぁ、自分の記憶ではぁ、2、3人だったと思うんすけど、自分もちょっと外出ちゃったんで、ちゃんと見てたわけではないので、それは、はい」
くぐもった声ながらも、抑揚のある明るい語り口は、殺人事件での法廷証言の場において、やや場違いな印象を受ける。曖昧な返答に、再び「どのぐらいの人がいた認識を持っていたか」と質問がなされ、青葉被告は改めて「3人くらい、という認識でありました」と証言した。
自身もやけどの影響で一時期は意識不明の重体となり治療を受けていたことから、被害結果については「えーと、逮捕状、読み上げられた時、亡くなられた人の名簿、読み上げられ、それで知りました」と、事件から10か月後の逮捕の時に知ったという。スタジオが全焼したことも「えーと、正確には警察の調書が差し入れられ、そのところに、全焼した、あのぉ、第一スタジオの写真が載ってたので、それで、ここまで燃え上がったのかと知りました」と、弁護人から事件の証拠を差し入れられた時に知ったと語った。