韓鶴子総裁(写真/EPA=時事)

韓鶴子総裁(写真/EPA=時事)

韓国では分裂状態

エイト:教団は近年、追い詰められているというのが現状です。コロナ禍で日本の信者が渡韓できないなかで昨年の安倍元首相銃撃事件が起きたので、お金が集まらない状況が続いた。さらに韓国では今、教団が分裂状態にあります。

 教祖・文鮮明の妻で現総裁の「韓鶴子派」は、「三男派」と汝矣島にあるY22という巨大ビルの地上権を争っていましたが、2014年に韓鶴子派が裁判で負けています。1000億円規模の賠償義務が発生し、加えてアメリカにある教団の資産管理団体をめぐる裁判でも三男派に負け、優良な不動産を売り払っている。金欠状態なのに日本からの送金が減り、そこへ解散命令請求が出ようとしていますからね。

紀藤:実際に解散命令が出ると信仰が地下化するといわれていますが、私はかつてオウム真理教が「アレフ」と「上祐(史浩)派」などに分かれたように、分派が進むのではないかと考えています。解散命令が出るのは教団に対してで、そうなるとお金を中央に貯めずに各地域にあるブロックに分散させ、ブロックごとに新たに団体を作れという指示が出るのではないか。

エイト:支部やブロック、関連団体の資産については、解散命令の手が及ばないのですか?

紀藤:それは清算人が支部やブロック、信徒会やUPFといった関連団体を、どこまで統一教会と一体と見なすかによります。解散後はそこも注目されるべきでしょう。

エイト:解散命令が出ても統一教会が突如地下化することはないと思いますが、一部の信者は我々に対してSNSで個人情報を暴露したりしている。先鋭化した集団も出てくるのではないでしょうか。

紀藤:状況に窮し、先鋭化する分派が出てくる懸念はあります。オウムでも一部リーダーが主導する「ケロヨンクラブ」という分派ができて、常軌を逸した修行を行ない死者が出ている。先鋭化は個々の信者にとってリスクだし、我々にとってもリスクです。

 そうした分派を生まないために、出家・在家合わせて10万人程度はいる信者をどう社会で受け入れ、軟着陸させるかを考えておく必要があります。

エイト:解散命令が出て終わりでは決してない。信者やその家族が被害を受けていればその救済も必要で、賠償のために教団の財産保全も必要になります。今度の国会で維新と立憲民主が、宗教法人法の一部改正と特別措置法の法案を出すとのことで、それが成立するかもポイントです。

紀藤:教団に問題があると気づいた元信者は、被害者に変わる。それをどう救済していくかですね。

後編に続く

【プロフィール】
鈴木エイト(すずき・えいと)/滋賀県出身。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。カルト宗教問題を扱う日本脱カルト協会に所属し、長きにわたり旧統一教会問題を取材。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小社刊)等。

紀藤正樹(きとう・まさき)/1960年生まれ、山口県出身。1990年に第二東京弁護士会に登録。全国霊感商法対策弁護士連絡会に所属し、2001年にリンク総合法律事務所を開設した。著書に『マインド・コントロール』(アスコム)、『議論の極意』(SB新書)等多数。

※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン