10月13日、解散命令請求を受けた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)。その存続の瀬戸際で、最前線で追及してきた人物への訴訟を乱発している。当事者であるジャーナリストの鈴木エイト氏と弁護士の紀藤正樹氏が緊急対談した。【前後編の前編。後編を読む】
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エイト:いよいよ統一教会に対する解散命令請求が出されることになりました。文化庁が教団に対して初めて質問権を行使したのが昨年11月で、それから7回もやるとは思わなかった。しかし、文化庁は非常に慎重に不法行為の証拠を集めていました。決して引き延ばしていたわけではなく、最短でこのタイミングになったのかなと。
紀藤:私は当初から「早く出せばいいのに」と考えていましたが、質問と回答を繰り返したことで、解散命令請求の裁判前にほとんどすべての論点、お互いの言い分が出揃った。結果的に解散命令の決定は早まると思います。
エイト:論点の整理ができていますからね。
紀藤:私は1990年代終わりから文化庁に通い、「オウム真理教に出せるなら、統一教会にも出せるでしょ」と言い続けてきたので、感慨深いですね。ただ、今日に至るまでには“空白の30年”があった。その間に育った二世の子供たちの悲劇を考えると、国や政府、社会には責任があるし、文化庁は反省すべきと思います。
エイト:さて、解散命令請求を目前にして、教団側は“訴訟戦術”に出てきました。紀藤さんは昨年、いち早く教団から訴えられています(注:2022年9月29日、テレビ番組内での発言で名誉を傷つけられたとして、旧統一教会は紀藤氏と他2人の弁護士、テレビ局2社に、損害賠償などを求める訴訟を起こした。教団は同年10月にも、ラジオ番組内での発言について、紀藤氏を名誉毀損で訴えている)が、今年8月には北九州市が教団から訴えられ、紀藤さんも含めた全国弁連の弁護士7人も関連団体である世界平和女性連合から訴訟を起こされた。
そして10月4日、私も初めて信者と関連団体の天宙平和連合(UPF)に、過去のツイート内容などについて名誉毀損で訴えられました(注:2023年10月4日、UPFと旧統一教会の信者らは鈴木氏に、損害賠償などを求める訴訟を起こした。UPFは鈴木氏が今年7月1日、X(旧Twitter)に投稿した安倍晋三元首相のビデオ出演に関する発言により、名誉を傷つけられたとしている)。担当弁護士は会見で「急いだ」というニュアンスのことを言っていた。解散命令請求を前に、なりふり構わず圧力をかけにきたようにみえます。
紀藤:エイトさんも「名誉毀損」ですよね? ここで指摘したいのは、今回の解散命令請求の争点でもあるのですが、霊感商法や家族による多額献金被害など“本筋”に関する内容について訴えられたのではない。僕の場合もそうですが、この訴訟は相手を黙らせるためのスラップ(恫喝)なんです。
エイト:実際、紀藤さんも訴訟を起こされて以降、メディアへの登場が減っています。本筋ではない“悪あがき”だとしても、訴訟中だとメディアとしては片方だけ呼んで言い分を聞くわけにはいかなくなる。「面倒臭い団体だ」とメディアに認識させ、解散命令請求について報道させないようにすることが狙いではないでしょうか。
紀藤:そう思います。エイトさんのような情報発信元を訴えることで、社会に情報が流れにくくなる。教団はそれをわかっているのでしょう。