いい夫、いい父親であればあるほど、先立たれた後の喪失感は大きくなり、大黒柱を失ったことで関係性が大きく変わっていく家族は少なくない。6度にわたるがん治療の末、2019年に亡くなった梅宮辰夫さん(享年81)の妻・クラウディア(79才)は、この4年で娘のアンナ(51才)とのかかわり方が大きく変わったと話す。
「娘からは何度も“パパが亡くなることを頭に入れておいて”と言われていたし、最後の方は長く入院生活が続いていたけれど、そんな状況でも“その日”が来るなんて考えもしませんでした」
ふたりの初対面はクラウディアが20才前後の頃。出会った瞬間、ひとめぼれした辰夫さんから「何もしなくていい、床の間に飾りたい」と熱烈なプロポーズを受けて結婚し、その言葉通り「生活のほとんどを主人に頼っていた」と振り返る。
「生きていた頃は、仕事をしてお金を稼いでくれるのはもちろん、アンナのお弁当作りや行事参加まで、こんなにいい人がいるのかしら、と思うくらい、深い愛情のもと何でもやってくれました。あとは、付き人がいたのも大きかったです。
当たり前ですが主人がいなくなれば付き人もいなくなるし、全部自分でやらなければいけなくなる。ですが私は漢字がほとんど読めないし、お葬式や相続など亡くなった後に必要な手続きもわからない。すべてアンナがやってくれましたが、本当に大変だったと思います」(クラウディア・以下同)
公共料金の支払いや銀行振り込みを経験したのも、辰夫さんが旅立った後だった。
「それまでは銀行ってお金を下ろすためだけの場所だったんです(笑い)。わからないことだらけだから、そのたびにアンナに聞いていたら『いつになったら覚えるのよ』と怒って怒って大変で……(苦笑)。だから主人が亡くなってしばらくの間、振り込みをするときは、銀行がすいている朝一番に行って、係の人にやってもらっていました。いま思うと、アンナも周囲の人も迷惑だったと思います」
女性の平均寿命が男性を大幅に上回るいま、クラウディアとアンナのように母と娘が残されるケースは少なくない。