『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、現役世代の悩みに答える。50代後半になると、どうしても頭をもたげてくる「定年後の身の振り方」。年金だけでは老後の生活が不安という人は多いが、かといって「再就職」に有利な資格やスキル、経験があるわけでもない──そんな悩みを持つ人に、和田医師の出す“処方箋”とは。
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60代以降も仕事はある
50代半ばを過ぎると、会社員であれば数年後にやってくる「定年退職」を意識せざるを得なくなります。年金の支給開始年齢が徐々に引き上げられるなか、生活費の不足を補う目的として定年後も再就職や再雇用で働き続けることを考える人は多いでしょう。
すでに定年後のセカンドライフについて準備してきた人は別ですが、いざ「再就職」を考えた時に、「通用するようなスキルや資格がない」と自信を持てない人も一定数いるのではないでしょうか。
確かに、現役時代の給料と変わらない収入を得ようとすれば、希望を満たす再就職は難しいかもしれません。人口の少ない若年層は人手不足が言われる一方、中高年は多くの企業で「人余り」の現実もあります。ここではやはり、「需要と供給」の関係を考えるべきだと思います。
では、60代の男性は、労働市場における「需要」がないと言えるでしょうか?
答えはNOです。今の日本では、年金受給世代になっても元気で、体力も知力も現役並みという人は多いです。当然、そのような働き手を求める職場もあります。
私が真っ先に思い浮かぶのが介護職です。要介護者の食事や入浴、排泄など日常の身の周りのケアを行う介護職は「女性の仕事」との思い込みがあるかもしれませんが、実は多くの介護現場で、男性はものすごく歓迎されています。車椅子への移乗や寝たきりの人の身体介助では特に力仕事の場面が多く、男性の活躍できる場面と言えるでしょう。