迷惑系YouTuberの動画を見るのが止められない子供たち(イメージ)

迷惑系YouTuberの動画を見るのが止められない子供たち(イメージ)

 その映像はYouTuberが警察を追い払ったかのように見えるが、起きた現実は違うかもしれないと大人なら推測ができよう。しつこく拒否したあげく応援の警察官に取り囲まれ、カバンの中身や身分証明書を確認され、とても勇ましいとは思えない様子で退散したかもしれないが、そうした部分はYouTuberにとって都合が悪く、公開されることはない。しかし子供には、見えているもの以外に現実があると分からないのだ。

 息子は、コンビニ前で自分が撮影した映像を「面白い」と思い友人に送信、それが第三者の公開SNSに転載されたことで、コトが明るみに出た。執拗に撮影された警察官からも「大事にするつもりもないし、しっかり言い聞かせてください」と言われ、温情的な判断が下ったことにホッとした森本さんだが、その警察官は「同じようなことがたくさん起きているんです」ともこぼしたという。

ネットで注目されれば”勝ち”

「警察を馬鹿にすることに高揚感があったようです。そこからエスカレートしてしまい、次々に立場の弱い人を狙ったと言っていました」

 沈痛な面持ちで筆者の取材にこたえてくれたのは、都内の私立高校で教頭を務める荻野務さん(仮名・50代)。森本さんと同様に、生徒が警察官を無断で撮影して揉めたり、教員をからかう、立場の弱い人を狙うなど、子供のいたずらでは済まされない言動が、最近は目立つようになったと打ち明ける。

「やんちゃな生徒の一部が、街中で警察官から職務質問を受け、撮影したり抵抗したりして補導をされたケースがこの数年で何件か起きています。全員が、ネットで同じような動画を見たと認めており、権力の象徴である警察官をおちょくったり、馬鹿にすることに高揚感があったと話しています。それがエスカレートしてなのか、生徒達は学校敷地外の喫煙所で喫煙する教員を隠し撮りしたり、女性教師がトイレから出てくるところを撮影し生徒間で共有して、嘲笑の対象にまでしていた」(荻野さん)

 ここまでであれば、まだ「校内の問題」で済まされたかも知れないが、警察や教員だけでなく、生徒達のターゲットが「一般市民」にまで及んでいたことで、学校としても当局に相談するしかなくなったという。

「ある保護者の通報により、こうした映像をアップしている生徒のアカウントのいくつかを把握し、チェックしていました。すると、今度はホームレスと思われる方に話しかけて馬鹿にしたり、高齢のコンビニ従業員に対して暴言を吐く映像もあり、これはさすがに度を超えているということで、保護者と相談の上、警察に相談することになりました」(荻野さん)

 この件の責任者だったベテランの女性教師も、事情を聞き取る中で生徒から何度もスマホを向けられたり、隠し撮りをされたりして「生徒達は言い返してこない人、弱者を叩いて優越感を得ようとしているとしか思えない」と荻野さんは憤る。

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