パワーハラスメントもセクシャルハラスメントもあってはならないし、被害者に寄り添って回復に協力するのは当然だというのが、2023年の今、社会の共通認識だろう。だが、それらに無関心で無神経だった時代が長かったため、日常生活で認識を改めるには至っていないのが現実だ。ライターの宮添優氏が、同性からの性被害を告白したものの、周囲の無理解とはぐらかしで受け止めてもらえなかった被害者たちが、今の風潮をどう感じているのかについてレポートする。
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英BBCによる報道、さらに外国人記者クラブで被害者が会見をしたことをきっかけに、故ジャニー喜多川氏による性被害が注目され、優位的地位を利用した子供への性被害、同性からの性被害が改めて、社会問題として関心を集めている。
マスコミを中心にファンや他の芸能人、当然ながら相当数の国民が「知っていた」にも関わらず「そんなものだと思っていた」と見過ごしていた現実に向き合えず、本筋でない話題ばかりが盛り上がり始めているのが現状かもしれない。ただそれでも、この問題について「ひどい話だ」と多くの国民が憤り、マスコミも「許されない」と断罪、そして自省も行い始めたのも事実。世論が被害者に寄り添うべきという雰囲気が強まり、これまで言い出しにくかった性被害について訴えやすくなるのではと期待の声も聞こえる。だが、そんな様子を眺め、複雑な思いを抱いている人たちがいる。
担任教師も親も、誰も寄り添ってくれなかった
「周囲からいろいろなことを言われ、果たして自分が被害者なのかもわからなくなりました。その後もホモと馬鹿にされ苦しかったのですが、笑ってごまかすしかなかったんです」
都内在住の会社員・浜田悟さん(仮名・40代)は中学生の頃、1学年上の男子の先輩から性被害を受けた。先輩とは部活の先輩・後輩の関係だったが、ある日部室に呼び出されると、二人きりの状況下で下半身を触るよう要求されたという。部活動における上下関係は厳しく、最初は「ウソですよね」とおどけて見せた浜田さんだったが、すぐにそれが冗談でないと汲み取った。それから一ヶ月のうちに3度被害に遭い、理由は不明だが以後の要求はなかったという。
「当時は自分が被害にあったと理解できませんでしたが、時間が経つほどあれがまさに”性被害”だったと感じるようになり、数ヶ月後に担任に打ち明けたんです。親にも友達にも言えず、またあの先輩から要求されるかもと考えると、部活はもちろん、学校にすら行きたくなくなっていたんです。とにかく嫌で、仕方なかった」(浜田さん)
しかし、寄り添ってくれるだろうと期待していた担任の反応は、全く予想だにしない、浜田さんを奈落の底に突き落とすようなひどいものだった。