臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、深夜ドラマ『きのう何食べた?』で描かれている「他者理解」と「共感性」について。
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俳優・西島秀俊さん(52才)演じる料理上手で几帳面で倹約家の弁護士・筧史朗、通称シロさんと、その恋人で俳優・内野聖陽さん(55才)演じる陽気で人当たりの良い美容師・矢吹賢二、通称ケンジの2人の日々の生活を、食を通して描いた『きのう何食べた?Season2』(テレビ東京系)。同性カップルのリアルな毎日が描かれているこのドラマ、見ている人たちにほろ苦くもあたたかいと感じさせるのは、互いに対する「共感性」があるからだと思う。
令和になってから、キュンとさせる素敵な恋愛ドラマや泣ける恋愛映画はいくつも作られてきた。だが夫婦関係を描いたドラマとなると、すれ違い、家庭内別居など、心温まる雰囲気とは縁遠いものが増えてきた気がする。そんな中、相手を思いやり、わかり合おうとする気持ちがストレートに描かれているのが『きのう何食べた?』だ。
2019年にSeason1放送された『きのう何食べた?』は深夜ドラマの枠ながら、X(旧Twitter)の世界トレンド1位、見逃し配信の再生数が全12話で100万再生超えという大ヒットとなったドラマだ。原作はよしながふみ氏の同名の人気漫画で、ゲイであることを隠して生きているシロさんと、職場でもゲイであることをカミングアウトして生きているケンジのリアルな暮らしや、食費を月2万5000円で賄おうとする日々の食卓が描かれている。2021年には映画化もされ。こちらも大ヒット。同性カップルならではの問題にも次々とぶち当たるのだけれど、その度にお互いを思いやり、わかり合おうとする様子にほっこりさせられる。
中でもSeason1から話題になっていたのが、内野さんの演技。ガッチリした体格にきりっとした顔つき、硬派な印象の内野さんの立ち居振る舞いが印象的だ。ゲイであることをカミングアウトしているケンジは、表情や仕草、口調など、どれをとっても柔らかな雰囲気を感じさせる。肘や膝を内側に倒すような動かし方や、手首や指の細かな使い方など、ロマンチックなことが好きなケンジの気持ちを反映したフェミニンさがにじみ出ている。見た目とのギャップがあるはずなのだが、そこにわざとらしさはなく、その仕草は自然でさりげない。