芸能界では、仕事を得るために“枕”をするタレントがいるという。一体どんな心理で“枕”が行われているのだろうか。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、取材の中で得た“枕”に関するエピソードを紹介する。
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これは仕事ではない。私の興味。芸能関係者と話していて、気心が知れたかなというタイミングで、「“枕”ってどう思いますか?」と聞かずにいられないんだわ。30代初めからそのクセがついて、つい最近も同じことを元ジャニーズ関係者に質問してしまった。
私のライターデビューは男性週刊誌で、「女性のセックス告白もの」だったの。私は当時20才になったばかりだったから、友達と会うと8割は男の話。その中で経験人数が多いコが、私のような“ぴよぴよ女”に先輩風を吹かせて惜しげもなく体験談を話してくれたから、仕事という自覚もなかったんだわ。
あらかたの友達から話を聞き終えた私はその後、街に立った。新宿、渋谷、銀座、原宿。日曜日、ヒマそうに歩いている女たちに、「年齢と大まかな職業以外は聞かないから、人に言えない話、私にしてくれない?」と声をかけまくったのよ。謝礼は喫茶店のコーヒー代だけだったけれど、思った以上に収穫があったの。そんな“武者修行”が功をなしたか、芸能界の人に「枕(=枕営業)」のことを聞いて気分を悪くされたことはない。
その中でも忘れられないのは、大手芸能プロダクションでマネージャーをしていた男性の話だ。30代初めだった私は「その結果、どんな仕事を得ても、それからずっと『枕営業をしたから』と思わなくちゃならないのって、つらくないですか?」と。すると彼は「まあ、それはそうだけど、そんなに深く考えちゃいないっすよ」とのらりくらり。それでも食い下がって聞いたら、「じゃあ言いますけど、野原さんの言い分だと、実力のない人は永遠に出番がないじゃないですか。枕だって何だって取りあえずチャンスをつかんで、それから力をつけていくっていう道はダメなんですか!?」と、語気を荒らげたんだわ。そうか。そういう考え方もあるのかと、目からウロコがボロボロ落ちたわよ。
「どんな犠牲を払っても、女優であるということが人生の目的という人もいるんですよ。女優でいられることと比べたら、誰と寝るなんてどうでもいいこと。そう考える人もいるんです」。これはある映画プロデューサーから1年前に聞いた言葉だ。