公称会員827万世帯を誇る創価学会──政権運営に多大な影響を及ぼしながら、これまで公明党という緩衝材のおかげで、自民党との関係性は表に見えてこなかった。支持率低下にあえぐ岸田政権の生殺与奪権をも握る「最強集票組織」の正体に迫った。
自公ではなく「自創」という連立政権の核心を知り得る者は、永田町にも数少ない。長年その関係を取材し、創価学会との太いパイプがあることで知られる菅義偉・前首相のもとで首相補佐官を務めた帝京大学教授の柿崎明二氏がその内幕を描く。【全3回の第3回。第1回から読む】
* * *
この「政権中枢──宗教団体首脳」という特異な関係の源流を探ると、佐藤栄作・元首相と池田大作・会長(後に名誉会長)の関係に突き当たる。佐藤氏の自著『佐藤栄作日記』(朝日新聞社)によると、公明党が結成されて約1年後の1966年1月8日、東京都の水道料金値上げについて池田氏と初会談、都議会公明党の協力を得ることに成功した。その後、2人は何度か人を介して連絡を取り合い、国会対応で公明党に協力してもらっている。自公の源流は総理大臣と創価学会トップ、つまり「総創連携」だった。
さらに政権中枢との特異な関係が世間に知れ渡ったのは、1969年に発覚した言論出版妨害事件だ。明治大学教授の藤原弘達氏の『創価学会を斬る』(日新報道出版部)をめぐり、創価学会が内容の書き直しや出版中止を求め、関係者が書店や取次店に圧力をかけた事件であるが、この際、自民党の田中角栄・幹事長が藤原氏に「買い取り」を持ちかけたことも公になった。
田中氏は「公明党から頼まれたことはない。おせっかいをしただけ」などと釈明したが、親密な関係がかえって印象付けられた。また、国会では自民党の「貸しづくり」が見られた。民社党が求めた池田氏の証人喚問に対して公明党とともに反対に回ったのだ。
1987年に発足した竹下登政権下では内閣官房副長官を務めた小沢一郎氏が、秋谷栄之助・第5代創価学会会長の代理役の学会幹部と頻繁に連絡を取り、政治課題について協議した。この幹部は私にその事実関係を認めている。
佐藤栄作・首相、田中角栄・幹事長(のち首相)、小沢一郎・官房副長官(のち幹事長)、野中広務・官房長官(のち幹事長)、最近では菅義偉・官房長官(のち首相)──。外部からは異様に見える政権中枢と宗教団体首脳の関係が自公にとっては連立前から一貫したベースとなっている。これが自公関係の強さの秘訣だ。