【シリーズ・没後1年アントニオ猪木さんを語る】プロレス界のスターで「燃える闘魂」とうたわれたアントニオ猪木さん(享年79)が昨年10月1日に亡くなってから1年。その“闘魂”に人生を変えられたという人も多い。国際日本文化研究センター所長・井上章一(68)氏も猪木さんに魅了されたファンの一人だ。井上氏が猪木さんについて振り返る。
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小学校3、4年生のころ、学校の校庭でクラスメートとザ・デストロイヤーの必殺技「4の字固め」を掛け合って遊んでいた時、ふと気づいたことがありました。
この技は相手に「掛けさせてね」と頼まないとどうもうまく決まらない。私の脳裏にプロレスに対するある種の「疑い」が初めて生じた瞬間でした。ここから私とプロレスとの長き付き合いが始まったのです。
1972年、新日本プロレスを旗揚げしたエースの猪木さんは、その大事な初戦で「神様」カール・ゴッチに負けてしまう。
「なぜだろう」という驚きが、私を猪木プロレスの世界に引きずり込んでいきました。華やかな外国人選手が揃う「与党」の馬場・全日本に対し、“インドの狂虎”タイガー・ジェット・シンを相手に戦っていた当時の猪木さんには、応援したくなる肉体美と「野党精神」が備わっていたように思います。