体調が優れない時、病院に行く前にまず考えるのが薬の服用だが、頼りすぎるのはリスクがある。すべての薬は体にとって“毒”だと話すのは、松田医院和漢堂院長で日本初の「薬やめる科」を設立した松田史彦さんだ。
「どんなに効果の高い薬であっても、副作用のない薬はありません。現代医学の薬はほとんどすべてが化学合成物質で、その歴史もせいぜい100年ほどと浅い。のみ続ければどんなリスクがあるか、誰にもわからないのです」
長期にわたってのむほど、そのリスクは高くなる。例えば、降圧剤として広く使用されているアムロジピンには、めまい、動悸、肝機能障害、頭痛、筋肉痛、不眠、脱毛などの副作用があるなど、身近な薬にも危険が潜む。
「高脂血症の治療に使われるスタチン系の薬には、細胞膜を溶かす副作用があります。のみ続けると筋肉が溶ける横紋筋融解症になることがあり、もともと筋肉量の少ない高齢者が症状に気づかないまま服用を続けて歩けなくなってしまった例もあります」(松田さん・以下同)
ロキソプロフェンやアスピリンといった「NSAIDs」を主成分とする解熱鎮痛剤には市販薬も数多くあるが、これにもリスクがある。
「のみすぎると潰瘍が生じたり、肝機能障害のリスクが高くなることがわかっています。足の痛みで整形外科に通院して長年、NSAIDsを処方されていた高齢者が胃潰瘍になったケースもあります」
痛み止めという性質上、胃潰瘍が起きていても自覚症状がないまま進行してしまい、重篤な状態を引き起こす可能性もある。さらに恐ろしいのは薬の持つ依存性だ。松田さんは、精神科系の薬は実質的には麻薬と同じだと語る。
「不眠に悩む高齢者にも処方されていますが、こうした薬にはほとんどの場合、副作用として依存症があります。中にはのむことでかえって不安や不眠が引き起こされることもある。例えば、抗うつ剤の一種であるSSRIの添付文書には、異常な夢、体が勝手に動く、突然感情が抑えられなくなる……など、知らなければ病気だと思ってしまいかねないような副作用が書かれています。
薬の説明書は、効能よりも副作用に注目してください。病気だと思っていた症状が実は副作用だったということは、無数にあるのです」