全国各地で、クマによる被害が相次いでいる。被害件数は、国が統計を取り始めてから最も多かった2020年の143件を上回り、過去最多を更新している。秋田県では10月19日朝、市街地のバス停でバスを待っていた女子高生がクマに咬まれ、ほかに4人が次々に襲われた。同県のクマによる被害は8月頃から急増し、人身被害の件数は10月31日までの統計で全国最多の61件に達する。 現地で何が起こっているのか。NEWSポストセブン記者は現地へ向かった。
秋田県能代市に住む男性は、「今年のクマの数はちょっと考えられないほど多い」と不安を口にする。
「家の玄関前にはクマがしょっちゅう現れるし、窓から外を眺めると前の道を歩いてるんだから。里に下りてきてるんだよ。親子で3匹のクマが、田んぼの向こうを平然と歩いていたのを見たこともある。大人は車で移動すればなんとかなるけど、子どもは怖くて外には出せないよ」
人の生活圏に下りてきたクマは『アーバンベア』と呼ばれ、駆除の対象となる。秋田県では市町村が地元猟友会に委託をして、駆除等を行っているのが現状だ。湯沢市ではクマ対策として、すでに約90頭ものクマを捕獲しているが、地元猟友会の高橋俊一氏は「異常事態だよ」と語る。
「8月頃からクマが出没しだして、本格的に増えてきたのは9月半ばくらい。3日連続でクマが罠にかかることもあった。40年ほど猟友会で活動しているけど、過去にこんな年は記憶にないよ。はっきりした原因はわからないけど、猛暑で木の実などの餌になる植物が凶作で、餌を求めて市街地に出てくるようになったと言われているね」
クマが増えるに連れて、今年は農作物を荒らすだけでなく、人を頻繁に襲うようにもなった。
「女性や子どもが襲われたら、ひとたまりもない。クマがこれだけ増えた以上は駆除せざるを得ません。子グマを駆除したときは動物保護団体から批判されましたが、今、個体数を減らさないと、数年後に成獣になって、また住民が被害に遭うことになってしまう」(同前)
クマの大量発生を受けて、猟友会には県から1頭捕獲につき5000円の補助が出るようになったが、クマの駆除作業は基本的にボランティアで、持ち出しも多い。
「地域の安全を守るために、誰かがやらなければならない。好き好んでやるわけないじゃない。クマを仕留めるときには、なんとも言えない気持ちになるんだよ……」(前出の高橋氏)