故郷、茨城県桜川市・真壁町で講演会を開いた『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、当日の様子を振り返る。
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長く生きていると、予想もつかないことがあるんだね。てか、先日起きたことは、わが66年の人生で3本の指に入る慶事かも。いや、「これと並ぶことがあるなら言ってみろ」と言われても思い浮かばない。そのくらいすごいことだったんだわ。
「茨城県桜川市で講演をしませんか?」と私の元にメールが来たのは今春のこと。桜川市健康推進課の課長Sさんからのご依頼だ。わが地元・真壁町の「真壁伝承館 まかべホール」で、2時間近くの講演を打診された。
なにせ、18才で上京してからずっと、盆暮れ正月、法事にお彼岸のたびに、私は帰郷していた。また、毎年2月には恒例行事「真壁のひなまつり」があって、老いた両親が揃って寒空の中、手作りのあれこれを出品していたから、気になって足を運んだ。
真壁には古きよき町並みがいまなお残っていて、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている。講演場所として指定された「真壁伝承館 まかべホール」はその町並みと調和した建造物で、観覧席数300、音響環境に秀でた一流のホールだ。
講演の依頼にはもちろん二つ返事よ。コロナ禍で開催を見合わせていた『きらきら健康講座』の講師に私を選んでくれたと聞いて、飛び上がるほどうれしい。でもいまひとつ実感が湧かない。なのに、絶対に引き受けたい。
この感覚、どこかで経験してないか?と胸に手を当てて思い出したのが、ちょうど1年前のいま頃、NHKから受けた『あさイチ』の出演依頼よ。あのときは、その1か月前に受けた健康診断で「卵巣がんの疑い」と言われて手術することが決まっていて、「手術前に卵巣が破裂したら緊急入院の可能性もあります」と言われていたの。
緊急入院したらNHKに迷惑をかける。どうしよう!?と一瞬迷ったが、医師の言う「緊急入院の可能性」を私は無視することにした。そんなことは起きっこない。それより、「出たい!」という自分の気持ちに懸けたかったのよ。
今回の講演会もそう。人前で2時間も話したことはないから、故郷の人の前で大恥をかくかも。けど、やりたい! テーマが「女性と健康」と聞いたら、ますますやりたい!! 昨年の私の卵巣・子宮全摘の体験が全部生かせるではないの。相次いで胃がんで亡くなった、医者嫌いの年子の弟と義父の話も誰かの役に立つかもしれない。
でもその前に、私が東京でどんなことをしてきたかをありのままに話さないとなぁ。でなきゃ、子供の頃の鼻たれの私を知っている同級生は納得しないに違いないもの……などと、何をしていても講演会のことが頭から離れない春と夏が過ぎ、いよいよ当日を迎えた。
10月18日、ホールの入り口に、講演テーマ「自身と家族のがんからオバ記者が見たこと、感じたこと」が掲げられたスタンドが据えられていて、いよいよ気が引き締まった。そして、ほぼ満席の伝承館のステージに立った私──。