臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、岸田文雄首相に生じ始めた欺瞞性認知と「増税メガネ」について。
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ついに支持率が過去最低の26.9%(ANN世論調査)になった岸田内閣。1人4万円の所得税減税検討を進めているのに、それさえも「評価する」と答えた人は30%ほどで、「評価しない」が50%を超えるという世論調査の結果が出てしまった。聞こえてくるのは「増税メガネ」に「偽装減税」と揶揄する言葉。国民の中に首相や内閣に対する「欺瞞性認知」が広がっているのだろう。
10月23日に国会で行われた所信表明演説では、「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置いていく」と新たな経済政策を訴えた岸田首相。だが残念なことに、その言葉に響くものはなかった。経済という言葉を連呼し、そこを強調したはずだが、逆に繰り返されたことで、空回りしている感が強くなっていく。
落ちていく支持率、評価されない政策、増税メガネというあだ名、ここ最近の諸々の報道を見ても、世間では首相への欺瞞性認知が生じ始めている気がしてならない。欺瞞性認知は、嘘ではないかと疑うことだ。ちなみに、心理学の実験には、繰り返しの表現が欺瞞性を高めるという結果もある。そうならば、首相が所信表明で経済、経済と繰り返し、政策を強調するほど人々の欺瞞を強めてしまう結果になりかねない。
これまでの政策で使ってきた表現もそうだ。象徴的なのは”異次元の”という言葉だ。実際には異次元とはほど遠く、大仰な表現だったわりに効果は限定的。他にも”聞く力”をアピールして打ち出してきたものの、その耳に国民の声が届いている印象さえない。根本的なところは何も変わらず、良くなったという声は聞こえてこない。就任以降、そんなことが繰り返されてきたためか、首相の言葉をストレートに受け取ることができなくなっている。これでは減税と言われても政権の人気取りと思い、そのうち増税されると疑う国民が増えるのも仕方がない。