2022年夏に中国地方で、自前の値引きシールをスーパーマーケットで勝手に貼り、セルフレジを通す万引きを繰り返した男が窃盗罪で逮捕された。2023年夏には関西地方で、パート従業員の女性が勤務先のスーパーで半額シールを勝手に貼り母親に購入させようとして逮捕された。罪を犯してしまっては元も子もないが、値引きや半額シールは最近、フードロス削減よりも生活防衛のために手に取る買い物客が増えている。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、半額シールをめぐる最近の様子をレポートする。
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「使えるお金が減っていますし、物価高は店としてはどうすることもできません。私も含めて生活の危機が迫っていることを、現場にいると感じます」
都内のスーパーマーケット、夜9時をまわりいつもの「半額シール」が貼られようとしていた。筆者は定期的にこの場面を取材している。店側の協力あってこそだが、50代の店舗スタッフは「生活の危機」とまで語る。
「もう今年に入ってどれだけ値上げしたかわからない。いままでこれほど値上げした経験はありません。何もかも高いなと、自分の店でも思いますよ」
2023年4月に約5100品目の値上げがあり、10月にも約4600品目が値上げになった。品目なので、そこに数として加算されないお弁当やお惣菜なども上がることを考えればどれだけの生活用品が値上げになったか、とくに食料品類は食べていかなければならない私たちにとって深刻だ。
物価高と増税、社会保障費の増大によって多くのサラリーマンや自営業者の使えるお金、可処分所得が減っている。
食べるに困らないが、これまでのような買い物はできない
「以前は半額シールを貼ってもあまる惣菜や弁当がありましたが、最近ではほとんどが売り切れますね」
若い店員が手際よく半額のシールを手元の機械で貼っていく。
「この時間まで待っていたり、この時間を見計らって来てくだったりします。元値の半額ですからお買い得だと思いますよ」
筆者の大好きな巻き寿司は定価だと398円から498円に値上げされていた。それが半額となれば嬉しい話。しかし巻き寿司はすでにない。半額のシールを貼るまでもなく売れた。