柿沢未途・法務副大臣の辞任に発展した東京都江東区長選の公職選挙法違反事件。当初は、木村弥生区長が選挙戦中に柿沢氏の勧めで公選法違反となるネットの有料広告を出したという問題だったが、〈現職区議が緊急証言「私は柿沢未途側から買収をもちかけられた」〉(『週刊新潮』2023年11月9日号)と報じられて急展開を迎えている。さらに、柿沢氏側からの反論も聞こえてきた。
疑惑の舞台となった今年4月の区長選は激しい“自民分裂”の戦いだった。
自民党が推す現職の山崎孝明氏が優位と見られていたが、告示日直前に孝明氏が病死。息子として“弔い合戦”に臨んだ前都議の一輝氏を木村氏が破った。その木村陣営を陰で支えたのが、柿沢氏だ。政治部記者が語る。
「江東区(衆院東京15区)が地盤の柿沢氏は、前回選挙は無所属で当選後に自民党入りしたが、江東区の有力者である山崎親子とは犬猿の仲だった」
同じ江東区選出の都議会議員経験者というキャリアは共通するが、自民党東京都連内での力関係でいうと、後者の山崎親子が優位だった。
片や2009年の国会議員初当選時のみんなの党を振り出しに5つの党を渡り歩いてきた野党系の経歴の柿沢氏。他方、父の孝明氏は都議時代に五輪招致の旗振り役を務めた過去もあって森喜朗・元首相とも親しく、息子の一輝氏は「都議会のドン」と呼ばれた内田茂氏から目をかけられてきた。
当然ながら現在の都連会長の萩生田光一氏は山崎親子の区長選を強力に支援し、山崎支援に動くよう柿沢氏にも迫ったが、柿沢氏は表では「静観」。その裏で、密かに木村氏の選挙戦を支えていた。都政関係者はこう補う。
「柿沢氏の木村陣営への支援は、ネットの有料広告の提案に止まりません。柿沢氏の父である弘治・元外相の秘書を務め、柿沢氏の後援会事務総長を務めるベテラン元区議I氏が、木村陣営の中心人物となっていました。区長選の遊説では木村氏に寄り添い、マイクを持てば山崎孝明氏の多選を批判していた」