“ブギの女王”笠置シヅ子をモデルにしたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』には、笠置が在籍したOSK日本歌劇団の現役劇団員たちも出演している。どういった経緯で実現したのか。その撮影の裏側に迫る。【全3回の第1回】
4回目の朝ドラオーディションでヒロインの座を掴んだ趣里が、“ブギの女王”と呼ばれた笠置シヅ子をモデルにした福来スズ子を愛嬌たっぷりに熱演している。だがこの珠玉の朝ドラ『ブギウギ』の魅力は、彼女だけではない。
物語の舞台となる大阪の梅丸少女歌劇団(USK)で欠かせない存在だったのが、1922年に松竹楽劇部として結成され、笠置シヅ子も在籍したOSK日本歌劇団の現役劇団員たちだ。USKの劇団員として約30人が出演している。
男役トップスター・橘アオイ役として、凛々しい立ち居振る舞いに登場直後から「この女優は誰だ?」との声が殺到した翼和希もOSK日本歌劇団の男役スターだ。翼は2011年にOSKの研修所に入学して2年後に初舞台を踏んだ。テレビの仕事は今回が初めてだった。『ブギウギ』の制作統括を務める福岡利武氏が語る。
「最初はヒロインのオーディションを受けてもらいましたが、芝居がすごくナチュラルで誰よりもアドリブを入れていたため、ヒロインではなく男役トップスターで出演すれば面白い化学反応があるのではと期待しました。OSKでのキャリアもあるので歌劇のリアルな部分をドラマの中で再現してもらいたかった」
実際に撮影が始まると、翼が演じる歌劇団の男役トップスターの存在感は抜群だった。
「大声で後輩を叱咤する迫力満点のお芝居を見ていると、自分が怒られた気がして身が引き締まる思いがします(笑)。ただご本人は役柄とは違ってすごく明るい性格で、劇団員を叱り飛ばすシーンの撮影では、カットがかかった直後に『ごめんな~怖かったやろ』『自分でも怖いと思うわ~』などと言って現場を和ませてくれました」(同前)
劇中で2トップを演じる蒼井優と翼は、撮影現場でも互いを高め合っていたと福岡氏は言う。
「2人は芝居のアプローチについてよく話し合っていました。蒼井さんも歌劇がお好きだそうで、翼さんに歌劇のお芝居について訊ねたりして、お互いにいろいろなことを吸収していたようです」