現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。物語の舞台となる大阪の梅丸少女歌劇団(USK)のメンバーとして、笠置も在籍したOSK日本歌劇団の現役劇団員たちも出演。視聴者に大きな感動を与えた圧巻のラインダンスの背景には、趣里や蒼井優ら女優の奮闘があった。【全3回の第2回。第1回から読む】
4歳から始めたバレエでロンドンに留学したこともある趣里、そして2022年8月に出産後、初のドラマ出演となる蒼井優は年明けから時間の許す限りバレエの稽古に励み、舞台の完成度に貢献した。
そうして第2週に披露されたレビューシーンに続けて圧巻だったのが、第18回(10月25日放送)でのUSKの一糸乱れぬ艶やかなラインダンスだ。
整列したメンバーが一斉に同じステップを踏んで踊るラインダンスの撮影秘話を、OSKの劇団員、紫咲心那が明かす。
「女優さんのなかにはラインダンスを知らない方もいたので、昨年末から今年にかけて趣里さんをはじめとする女優さんたちをスタジオに招き、私たちが実演を交えてラインダンスを紹介する講習会を開きました。そこでラインダンスの基礎や本番までの準備、練習法をお伝えしたんです」
宝塚やOSKなどで演出を手掛ける荻田浩一氏の本格指導のもと、舞台シーンの撮影が始まったのは5月だった。この時、紫咲は女優たちの“プロ根性”に驚いたという。
「数か月で女優さんたちはしっかりラインダンスの基礎ができていて、すごく練習してきたことが伝わりました。OSKの劇団員は研修所でラインダンスの基礎などを2年間学び、初舞台に立ってから歳月をかけて徐々に上達していきますが、女優さんたちはたった数か月で上達されていた。もともとバレエやダンスをしていたとはいえ、ヒールを履いて踊るのは難しかったはずですが、振り付けの覚えも本当に早くてびっくりしました」
慣れないテレビの撮影現場で、キーパーソンとなったのはOSK日本歌劇団の男役スターの翼和希だった。OSK日本歌劇団の京我りくが語る。
「翼さんは厳しい先輩役でしたが、カメラが回っていないところでは盛り上げ役に徹して、笑いの絶えない楽しい雰囲気を作ってくれました。OSKの劇団員は女優さんと仕事をするのが初めてでみんな緊張するなか、翼さんが女優さんと私たちの懸け橋となって緊張を解いてくれました」
前出の紫咲もこう語る。
「蒼井さんは映画やドラマでずっと見てきた“雲の上の存在”でしたが、現場では毎回楽屋に挨拶に来てどんどん話しかけてくれて、私たちの名前もすぐに憶えてくれました。おかげで和気あいあいの現場になりました」