2年前の6月、東京・立川市のホテルで風俗店勤務の女性(31=当時)を殺害し、同店従業員の20代男性も殺害しようとしたとして殺人や殺人未遂などの罪に問われている元少年(21)の初公判が11月7日、東京地裁立川支部(新井紅亜礼裁判長)で開かれた。
起訴状などによれば、被告は19歳だった2021年6月1日、立川市のホテル客室内で風俗店勤務の女性Aさんを包丁で殺害したほか、ホテルの廊下で風俗店従業員の男性の腹部や首を刺し、全治3か月の重傷を負わせたとされる。
被告は白いシャツの上に青いベストを着用し、グレーのズボンを履いていたが、白いシャツはしわだらけで、首元や裾が黄ばんでいる。人定質問のため証言台の前に立つよう裁判長に促されると、立ち上がって歩きながらシャツの裾をズボンに入れた。
開廷までは黙っていた被告だったが、生年月日等を問われると、それには答えずに、何か語り始めた。
「え〜簡単に言えば〜……ウルトラの〜……」
生年月日や住所などを答えないので、弁護人が起訴状を被告に示し、裁判官が「いま、決まった住居はありますか?」と尋ねると、これには「いや、ないです」と答えた。ところが検察官による起訴状読み上げの途中から、不規則発言が始まる。
「仮面ライダーが……トランスフォーマーの……」
罪状認否でも、起訴状に間違っているところがないか問われているにもかかわらず、それには答えずに続けた。
「ウルトラのゼロ……ウルトラの……って人にすごい似てるんですけど、バイオハザード、なんか、ハリウッド、なんか……トランスフォーマーの関係で……今ちょっと悩んでて、みんな死んでる世界で南海トラフ地震に……それがいずれ目覚めて……仮面ライダーキバの……」
止まらない。
「殺人と殺人未遂について、述べることがあれば言ってください」
裁判長が改めて問いかけるも「えー、ツタンカーメンについてご存知ですか、とんでもない状況に陥ってて……」と、仮面ライダーから話題はツタンカーメンに移る。「一度、元の席に戻って下さい」と裁判長が遮ると、これには素直に従った。
ところが検察側冒頭陳述が始まると、またもや不規則発言が始まり、冒頭陳述が聞き取れなくなる。このため、わずか13分で休廷となった。しかし休廷が明けても被告の発言は止まらず「仮面ライダー龍騎」や「バットマン」「ツタンカーメン」などの固有名詞を出しながら何かを語り続ける。
「あと一番ヤバいのが、アーノルド・シュワルツェネッガーで、やべえ催眠術が……」
とにかく止まらないが、問いかけには応じられるようだった。「その話、今しなきゃいけないですか?」と裁判長が聞くと、「いけないです!」とキッパリ答え、最終的に退廷命令が出されると「いや、まだ話したいことある。ジャーナリスト呼んできて!」などと抵抗を示していた。