臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、38年ぶりに日本一となった阪神タイガース岡田彰布監督の目の変化と「自己成就予言」について。
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阪神タイガースファンにとっては、待ちに待った瞬間が38年ぶりに訪れた。両手を広げた岡田彰布監督の身体が選手やコーチたちによって、2度3度と宙を舞う。全員が胴上げされている岡田監督に向かい、両手を高く上げて喜びを分かち合う。監督を中心とした美しい輪がそこにあった。
だから今年の阪神は強かったのか、とその光景を見て納得した人も多かったのではないだろうか。観客席やカメラに向かって手を振る者は一人もいない。誰一人として輪を乱す者がいないのだ。その胴上げは、チーム一丸となって戦ってきた今季のシーズンを象徴していた。
象徴的な胴上げになった理由は、11月7日の日刊スポーツの「【阪神】岡田彰布監督胴上げの時の謎に注目 なぜナインは皆、2回とも円の中心を向いていたのか」の記事で解けた。「選手やスタッフは胴上げの一体感にもこだわり、事前にベストな形を共有していたそうだ」とある。事前に優勝を見越してシミュレーションしていたのだが、肝心なのは”ベストな形を共有”という部分だ。岡田監督の元で戦ってきたチームとしてベストな形を表現する。胴上げもチームの姿を示すパフォーマンスだったのだ。
日本一から一夜明けた6日、阪神電鉄の本社を訪れ、シーズン終了の報告後、阪神タイガースのイメージカラーである黒系のスーツに黄色味を帯びたネクタイを締めて会見を行った岡田彰布監督の目尻は、ほとんど緩みっぱなしのようだった。シーズン中には険のある顔つきで、刺すような厳しい目をしていた。しゃべるのがあまりうまくないといわれてきたこともある監督は、言葉よりもその目がモノをいうことが多いように思う。厳しい局面になるほど、うかつに近寄れば切り付けられそうなほど鋭く、人の心を見透かすように冷たく光っていた。