道ならぬ恋に身を焦がす男女ふたり。その行き着く先は破滅か、それとも……。数十年にわたるテレビドラマの歴史上、「不倫」をテーマにしたり、物語のなかに取り入れている作品は数多い。しかし、ひと口に“不倫ドラマ”と言っても、その有り様は時代ごとに移り変わる。ドラマオタクのライター・編集者の小林久乃氏が、放送中の連続ドラマから、その最新事情を紐解く。
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新聞のラテ欄を見ていて「?」と思った。毎週末、テレビ朝日では深夜帯に3本の“不倫ドラマ”が放送されている。ドラマオタクとして長年テレビドラマを見続けているけれど、これはとても稀なケースだ。
1990年代に『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系・1993年)、『青い鳥』(1997年・TBS系)、『失楽園』(1997年・日本テレビ系)、『Sweet Season』(TBS系・1998年)など、畳みかけるように、不倫ドラマが量産されていた時期はあった。バブル経済は崩壊しても日本はまだ世界第2位の経済大国で、女性の社会進出が加速していった当時の世相を表しているようにも思える。そんな不倫に寛容な(?)時代でも、1つのテレビ局で同日に立て続けに放送されることはなかったはずだ。
さらに気になったのは、現在放送中の3作とも現役のアイドルたちが主演を務めていることだ。昔のように(当時)中堅どころの俳優が演じているのではない。そして各作品、不倫ドラマらしく、激しさはないけれどラブシーンがある。これは俳優として頭ひとつ抜けるための、トライアルなのかもしれない。そんな3作品のあらすじや、私なりに考える見どころを紹介したい。
『単身花日』主演・重岡大毅の「人の良さ」
まずは毎週土曜23時から放送中のサスペンス『単身花日』。主演はWEST.のメンバーである重岡大毅。重岡演じる、桜木舜が単身赴任で地元に戻り、初恋の女性・武田花(新木優子)と再会。一般的にもよくある同級生パターンで、桜木が惹かれてしまう。花はただの恋愛感情ではなく、どこか常軌を逸した雰囲気を醸し出している。何かがおかしい。最終的に泥沼に突入する雰囲気だ。
不倫3作品の中で、見応えがあるのはこの『単身花日』だ。昼ドラのようなトンチキな内容は否めないけれど、頻繁に連続ドラマに登場する主演の重岡の演技力は大きい。
『知らなくていいコト』(日本テレビ系・2020年)の、恋人への嫉妬に狂った役も良かったが、やはり彼のパブリックイメージと重なる、人柄のいい会社員の印象のほうが強い。『これは経費で落ちません!』(NHK総合・2019年)や『#家族募集します』(TBS系・2020年)がそれだ。
今回の桜木も同じで、人の良さが仇になって妻以外の女性に恋愛感情を抱いている。ゆえにラブシーンの説得力が欠ける……というところ。彼の場合、不倫ドラマで俳優の階段を上るよりも“いい人路線”を進んでほしいというのが、ドラマオタクの希望だ。