じゃこ天うどん(時事通信フォト)

愛媛県の名物・じゃこ天うどん(時事通信フォト)

 発言をきっかけに四国側から秋田県に打診があり、今月15日に東京・有楽町の交通会館で各県の特産品や酒を合同で販売する物産イベントが開催されることになりました。佐竹知事も駆けつけて、秋田と四国の特産品をPRする予定になっています。16、17日には名古屋でも同様のイベントが行なわれるとか。ああ、なんて心温まる展開なのでしょう。

 仮に知事の発言が単なる炎上騒動で終わっていたら、どうなったか。炎上に加担した人は、ちょっとだけ溜飲が下がったかもしれませんが、それで心が平穏になるわけではありません。むしろなおさらイライラが募るだけです。まかり間違えて、炎上に加担したことを「成功体験」だと認識したら、どんどん不幸な人生になっていくでしょう。

 ウケ狙いの発言が炎上している光景を見せられる側も、世の中のギスギスっぷりをあらためて感じたり、自分も発言に気を付けようという警戒心が必要以上に高まったり、他人に対する粗探しの意識が高まったりなど、ロクなことはありません。世の中全体がセコイ正義感を振り回したい人のとばっちりを受けて、ひと言で言えばいい迷惑です。

 ひとつ間違えれば無益でくだらない騒動になるところでしたが、秋田県民と四国側のみなさんの大人力に救われました。人の失敗をムキになって攻撃したり、失礼なことを言われたからと怒りや恨みをふくらませたりするのではなく、ちょっとネタにしたり寛大に許したりするほうが、はるかに美しく賢い対応と言えるでしょう。

 佐竹知事の謝罪の仕方も、大きなポイント。「不謹慎な発言で自分の至らなさを深く実感している」「四国の方々や県民に大変不快な思いをさせ、心からおわび申し上げたい」などと素直に頭を下げています。ここでもし、政治家が言いがちな「不快な思いをさせたとしたら」という「不快な思いをしたお前が悪い」と言いたげなフレーズを使っていたら、たぶん平和な展開にはなっていません。

 奇しくも「じゃこ天」発言と同じ日に、佐竹知事は記者会見で、クマの駆除に対する電話での過剰な抗議は「業務妨害だ」「乱暴な電話はすぐ切っていい」と言い切って話題になりました。この発言には多くの県民が「よく言った!」と喝采を送っていて、そんな信頼関係が失言のフォローにつながったのかもしれません。江戸時代の秋田藩主、つまりはお殿様の末裔でもありますが、それはあんまり関係ないでしょうか。

 私たちも秋田県民と四国の人たちを見習いたいもの。周囲の人がうっかりな発言をしたときは、全力でフォローしてあげましょう。そして、自分が失礼なことを言われたときも、相手に悪意や面倒な魂胆がないなら、いちいちいきり立つ必要はありません。「あーあ、言っちゃってるよ」ぐらいのソフトな受け止め方をしたほうが、平和を保てるし自分としても楽ちんです。失礼を撃退するもっとも有効な方法は、寛大な対応かもしれません。

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