失言はゼロにはできないものかもしれない。一方で、事後の対応によってその後の状況が大きく異なってくるのも事実。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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政治家は「失言」が得意です。そして政治家がケシカラン発言をすると、いきり立って批判する人が、ワラワラと湧いてくるのが常。なかには筋金入りのケシカラン発言もありますが、何でもかんでも目くじらを立てればいいわけではありません。勇ましい発言をするのがカッコイイと思っている人は、たいていちょっと痛い人でもあります。
秋田県の佐竹敬久知事が、先月下旬に地元で行なわれた会合で講演し、四国の料理やお酒に対して「貧乏くさい」「うまくない」などと述べました。内輪の集まりでのウケ狙いとはいえ、たしかに失礼な発言ではあります。
知事の発言を知って「すわっ、秋田と四国の全面戦争勃発か!」と心配した人もいたでしょう。しかし、そんな物騒なことにはなりませんでした。佐竹知事の「失言」に対する秋田県民の絶妙のフォローと、ケナされた側である四国の人たちの反応は、「人が幸せに生きるために大切なこと」を教えてくれたといっても過言ではありません。
報道によると、知事に「貧乏くさい」と評された愛媛県の特産品の「じゃこ天」は、発言が報じられて以来、売れ行きが急上昇。秋田県からの注文が目立ち、「うちの知事がすみません」といったお詫びのメッセージも寄せられているとのこと。
東京・新橋にあるアンテナショップ「香川・愛媛せとうち旬彩館」でも、じゃこ天の売り上げが倍増。たしかに食べてみたいですよね。応援とお詫びの気持ちを込めてか、「私、秋田出身なんです」と伝えるお客さんも多いとか。
愛媛県側の関係者も、最初はカチンと来たかもしれませんが、「おかげで有名になった」「秋田の人からの温かい言葉が嬉しい」と前向きにとらえているようです。今、じゃこ天は日本中から熱い視線を向けられている、もっともホットな名産品と言えるでしょう。