さらにソトイチには中東のイスラム諸国担当の「P班(パレスチナ班)」という極秘チームがあった。
現在戦争の舞台となっているパレスチナは国連未加盟ながら百数十ケ国が承認している独立国家。国土はヨルダン川西岸地区とガザ地区に大別され、ガザ地区を支配しているのが、イスラエルと交戦中のハマスである。捜査関係者は「学生運動に限界を感じて日本を飛び出し、1980年代に武装闘争を繰り返していた極左グループの日本赤軍がパレスチナ周辺を拠点化したため、P班が出来たようだ」と解説する。
だが、大きな出来事が相次ぐ。2001年 4月、日本赤軍の重信房子元最高幹部(満期出所)が解散を宣言。9月11日にはイスラム過激派の米同時多発テロが起きたのだ。公安警察にとっては国際テロ対策が急務となったため、警視庁公安部には新たに国際テロ担当の外事3課が設置され、イランなど中東のイスラム諸国の案件は3課が担うこととなった。
前出の捜査関係者が語る。
「ロシアに精通する外事1課の重要性は不動。ただイランという大きな柱を失った影響も小さくない。それが焦りを生み、重圧が蓄積されていた可能性はある。いずれにせよ判決は来月27日に下る」
警視庁の外事部門は一昨年、旧2課が中国担当の2課と北朝鮮担当の3課に細分化され、旧3課が4課(国際テロ担当)に名称変更。1〜3課の重点対象国も同じ1ケ国ずつとなった。1課が轍を踏むことはないと信じたい。
【プロフィール】
宇佐美蓮(うさみ・れん)/1960年代、東京都大田区生まれ。ジャーナリスト。元マスコミ記者で、警視庁や警察庁の取材に長く携った。著書に小説『W 警視庁公安部スパイハンター』がある。