国内

【最期に後悔しないために】典型的な仕事人間が末期がんと宣告されて気付いた「家族との信頼関係」の大切さ

最期に「ありがとう」と言うことができる人は、公開は残りにくい(写真/PIXTA)

最期に「ありがとう」と言うことができる人は、公開は残りにくい(写真/PIXTA)

 もしもあなたががんを患い、余命1年と宣告されたら──死が迫っている絶望の中で、会いたい人、伝えたいこと、やりたいこと、食べたいもの、行きたい場所……自分が本当に望んでいることを知るには、どうすればいいのだろうか。めぐみ在宅クリニック院長の小澤竹俊さんは、お迎えが近くなった患者にこう問いかける。

「初めて病気がわかったとき、どう感じましたか」「治療中につらかったことはありますか」「治療を頑張ったとき、あなたの支えは何でしたか」。

 これらの質問に答えるとき、それまで気づかなかった自らの支え、つまり家族や友人の存在、自分が大切に守ってきたこと、自身の誇りや役割などに気づき、不思議と笑顔を取り戻していくという。

 人生の最期を意識して初めて、本当に大切なものに気づく人は少なくない。とある50代の銀行員の男性は、職場の定期検診でがんが見つかり、小澤さんの病院に来た。絵に描いたような仕事人間だったその男性は、大きなショックを受けていた。何よりも大切にしてきた、仕事ができなくなるからだ。

「そのかたは、元気な頃は家庭を顧みず働き続け、すべてのことを会社の利益になるか否かで判断していたそうです。ですが自分が病気によって“仕事ができない側の人間”になったことで、価値観が180度変わった。本当に大切なことは利益や成果などではなく、仲間や顧客、そして何より、家族との信頼関係だと思うようになったのです」(小澤さん)

 亡くなるまでの間、男性は家族や同僚などの大切な人一人ひとりに向けて、直筆の感謝の手紙を書き続けたという。

 緩和ケア専門の有料老人ホーム「GARO HOME 鶴舞」経営者で自身も看取りに立ち会ってきた看護師の金丸直人さんは、死の間際に立たされてからでも人は変わることができると言う。

 一昨年に都内の病棟で亡くなったとある80代の男性は、地方で暮らす息子夫婦とも、妻とも、最期の言葉を交わすことはなかった。男性の息子が涙ながらに語る。

「まだコロナ禍の最中でしたから、父が末期がんとわかると同時に“死に目には会えないんだろう”と覚悟してしまったんです。父も“見舞いはいいよ”と言っていました。でも、だからといって顔を見せることを諦めなければよかった。スマホやタブレットを使ってリモートで面会できたかもしれないし、医師に頼み込めばひと目会えたかもしれない。父はきっとさみしかったはずです。いまだに後悔しています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《追加生産決まる人気ぶり》佳子さまがブラジル訪問で神戸発ブランドのエレガントなワンピースをご着用 ブラジルとの“縁”を意識されたか
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンを食べようとしたらウジ虫が…》「来来亭」の異物混入騒動、専門家は“ニクバエ”と推察「チャーシューなどの動物性食材に惹かれやすい」
NEWSポストセブン
「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 長嶋一茂のヤクルト入りにカネやんが切り込む「なんで巨人は指名しなかったのよ。王、理由をいえ!」
週刊ポスト
タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》王貞治氏・金田正一氏との「ONK座談会」を再録 金田氏と対戦したプロデビュー戦を振り返る「本当は5打席5三振なんです」
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン