「同年代の男の子が異性の子と食事に行く時、ある程度の地域や店を決めることがあると思います。しかし被告は行く地域を決めるだけでなく、店で何を注文するか決めるぐらい、細かい性格。几帳面が災いすることが多く、自分で敷いたレールを少しでも外れると、部屋にこもり、塞ぎ込む。自分にはこれしかないと考えると没頭し周りが見えなくなることがあった」(同前)
被告は事件を起こす数日前から、「ドライブ行ってくる」と夜に出かけるようになった。これまで以上に笑わなくなり、「1人になりたい」と言っていたが、母親は、新型コロナワクチン接種の副反応の影響かとも思っていたという。そして事件前日の夜に「明日の夜は鍋が食べたい。夕飯は鍋にしてほしい」と言い、何も持たずに出かけて行った。
母親は事件当日、鍋の準備をして被告の帰りを待っていたが、いつも夕食を食べる18時になっても帰ってこず、19時を過ぎても音沙汰がない。警察に捜索願を出しに行ったところ、息子が事件を起こし、出頭したことを知ったという。
こうした母親の調書読み上げの際、両手でずっと耳をふさいでいた遠藤被告。事件を起こしたことで“レールを外れた”と思い、“塞ぎ込んで”しまったのか、この日の午後から始まった被告人質問では、証言台の前には座ったが、ずっと俯いたまま、弁護人の質問に一切答えることはなかった。
翌日11月14日の被告人質問では同じように質問に答えない姿勢を見せたが、弁護人の問いかけのうち「どうして何も話さないのですか」という質問に対して、唐突に小さな声で「社会に戻るつもりがないからです」と答えた。続けて検察官が「もう少しそれについて詳しく説明できますか?」と聞くと「答えたくありません」と返答し、事件については一言も話さないまま、被告人質問は終わった。
その後裁判では、被告が逮捕時に語ったという調書の読み上げが行われたが、そちらでは事件や生い立ちについて詳細に語っていた。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)