来年の初場所後に、日本相撲協会では2年に一度の理事選が行なわれる。定員10人を5つある一門が分け合って無投票に終わることも多いが、過去には貴乃花親方が一門の調整を拒んで強行出馬し、当選を勝ち取ったこともある。今回、動向が注目されていたのが元横綱・白鵬の宮城野親方だ。一門の支持を取り付けないまま出馬するとみられていたが、本誌・週刊ポストの直撃取材への答えは――。
発端は今年5月場所中に行なわれた伊勢ヶ濱一門の食事会で元横綱・白鵬の宮城野親方が、「来年1月の理事選に出馬するつもりです。一門の親方衆には迷惑をかけません」と宣言したことだったという。週刊誌や夕刊紙で、年功序列に従わない“白鵬の野心”だと報じられ、注目を集めていた。
それというのも、相撲協会の理事は定員10人だが、2年に1回の理事選は事前の調整により無投票になることが多い。直近2回(2020年、2022年)も立候補者は10人ぴったりだった。協会関係者が言う。
「出羽海、二所ノ関、高砂、時津風、伊勢ヶ濱の5つ一門が、所属する親方の数に比例した数の理事候補を調整します。白鵬の所属する伊勢ヶ濱一門が擁立できる理事は1人で、前回当選したのは伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)。
伊勢ヶ濱親方は次の任期中(2025年7月)に定年を迎えるものの、その後任は元大関・魁皇の浅香山親方となるのが既定路線です。伊勢ヶ濱親方は今年1月に部屋の力士の暴力問題で理事から2階級降格した(現在、理事は空席1)のですが、その代わりに浅香山親方が役員待遇に昇格して審判部副部長の要職に就いている。協会も浅香山親方を後任と認めるようなかたちとなっており、一門が白鵬の出馬を潰しにかかっているような状況でした」
理事の定員10に対して11人が立候補すると、105ある年寄株(現在は「音羽山」が空席で104)を奪い合うかたちの選挙となり、10票で当選確実、9票で落選危機というラインとなる。若手親方のひとりは言う。
「白鵬が『一門の親方衆には迷惑をかけない』と話したということは、一門の力を借りなくても10票集める自信があるということ。宮城野部屋には部屋付きの間垣親方(元前頭・石浦)がいるが、あとは一門に関係なく票を集められるという算段なのだと捉えられていた」