『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、現役世代の悩みに答える。「将来、子供に迷惑をかけないようにしたい」と多くの中高年が考えがちだが、和田医師は「迷惑とは何のことか」がポイントだという。和田医師が語る。
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「お金の迷惑」は心配無用
これまでサラリーマンとして地道に働いてきた人が定年を前に心配することの一つに、「子供に迷惑をかけないようにしたい」というものがあります。ここで考えたいのは、その「迷惑」とはどういう迷惑なのかということです。
一つは、「お金の迷惑」があるでしょう。しかし、よほど放埒な生き方をしてきて多額の借金があるような場合を除き、おそらく子供に「お金の迷惑」をかけるケースはほとんどないでしょう。財産より負債が上回れば、子供には「相続放棄」という手段もあります。自分が年金を受給するようになれば、自分の生活は自分で面倒を見ることができます。子供が経済的に自立していれば、なおさらです。
一方、病気や認知症で介護が必要になるのを心配して、その費用を自分で賄うために、今からお金を貯めて少しでも残そうというのであれば、考え直してほしいと思います。
好きなことを我慢して、なるべくお金を使わないようにと地味に暮らしているほうが、要介護になる確率は高いと言えるからです。60代以降は、身体も脳も使わなければ衰える一方。しかし、70代や80代になってもアクティブで、若い人に負けないくらい元気な人があちこちにいるように、人間の身体や脳は使い続けることでその機能を維持することができます。
つまり、自分のためにお金を使い、好きに遊んで暮らしているほうが、将来、要介護になる確率を減らし、子供に介護などの心配をかけずに元気で過ごせる場合があるのです。もちろん、いい加減な暮らしをしすぎて倒れてしまうこともあるので、確率論ではあります。
ただ、一般に免疫機能が高い人ほど病気やストレスなどに強く、より健康に生きられるのは数々の研究を見ても間違いのないことです。そして、免疫機能を高めるためには、できるだけ日々のストレスをなくして「人生を思い切り楽しむ」ことが大事です。
反対に、迷惑をかけないようにと縮こまって暮らした結果、脳や身体機能が衰えて、かえって迷惑をかけてしまうというのは大いにあり得る話なのです。