行政と民間企業が連携する場合、多くは自治体が抱える課題解決に直結する事業を行う企業、コンサルタントなどが選択されることが多い。ところが、鳥取県中部にある倉吉盆地を中心に広がる、白壁土蔵の街として知られる倉吉市は、首都圏の大手私鉄である小田急電鉄株式会社と2023年に包括連携協定を結んだ。市内にある鉄道駅はJR倉吉駅だけという倉吉市と、小田急とが手を結ぶことでお互いにどんな効果を期待しているのか。ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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10月30日から11月5日まで、小田急線車内に設置されたトレインビジョンで、鳥取県倉吉市のよさをPRする動画が流された。小田急は東京・新宿駅をターミナルに小田原や江ノ島といった神奈川県、多摩ニュータウンなどに路線網を有する。鳥取県倉吉市に小田急が電車を走らせているわけでもない。それにも関わらず、なぜ小田急車内のトレインビジョンで倉吉市のプロモーション動画が流れたのか?
「倉吉市と小田急は、2023年1月に包括連携協定を締結しています。その協定に基づき、小田急から倉吉市の地方創生を手伝う話があり、今回の動画制作が実現しました」と話すのは、倉吉市企画課の担当者だ。
倉吉市と小田急の人材交流
倉吉市は人口が約4万4000人で、山陰地方では決して小さな都市ではない。しかし、市内には2015年に開学した鳥取看護大学があるものの、多くの若者が高校卒業と同時に市外へと流出する。
もちろん、UターンやIターンなどで若者が戻ってくるケースもある。実際、今回の小田急との連携もUターンで地元に戻ってきた人によって取り組まれた施策だ。
しかし、日本全体の人口が減少していくことを考えると、UターンやIターンに過度な期待を寄せることはできない、倉吉市そのものの魅力を高めて、多くの若者が倉吉に住みたい、倉吉で働きたいという気持ちを持つようにしなければならない。そのためにも、18歳以上が倉吉市で生活できるよう産業育成・雇用創出は欠かせない。
人口減少の打開策を打たなければならないことは、誰もが頭では理解している。言うのは簡単だが、実際に産業を育ていることは簡単ではない。20年30年という長い歳月が必要になる。その間も少子高齢化は待ったなしで進行する。