【著者インタビュー】唯川恵さん/『男と女 恋愛の落とし前』/新潮新書/924円
【本の内容】
「はじめに」にこうある。《今回、36〜74歳の未婚、既婚、離婚経験者の大人の女性たちに、実際に自身に起きた恋愛を語ってもらっている。女性たちから多様で奥深い恋愛模様を聞き、改めて恋愛の面白さや危うさと向き合うことになった》。全12話、唯川さんの名言・至言が目次に並ぶ。「不倫はするよりバレてからが本番」「恋愛体質の女に近づいてはいけない」「恋に伴うのは情熱、愛が背負うのは忍耐」「恋愛の奥底には負の感情が渦巻いている」……。本文にも思わず唸る名言が随所に。読み物として読むと滅法面白く、自分に引きつけて読むと反省しきり(?)の一冊。
いつも話してる感じを心がけました
フランスの名作映画と同じタイトルの『男と女』は、恋愛小説の名手、唯川恵さん初の新書で、女性たちとの対話をもとに、大人の恋愛について語りつくす。
自分の恋愛に酔って周りが見えなくなりがちな当事者と、それを一刀両断する唯川さんの切れ味の鮮やかさが、なんといってもこの本の読みどころである。太刀筋がみごとすぎて、斬られたほうもあまり嫌な気はしないのではないか。
「編集者経由で聞くところでは、『叱られるのも悪い気分ではなかった』と言ってくださった方もいるそうで、だとしたらありがたいです。
自分ではそんなに厳しいとは思っていなくて、いつも話してる感じを心がけたんです。ただ、会っているときは相手が口を閉ざさないように否定せずに聞きますから、文字にすると、実際に会っていたときよりは辛辣になってしまっているかもしれません。それが素の私で、唯川らしいかなと」(唯川さん・以下同)
本に登場するのは、36歳から74歳までの女性12人。未婚、既婚、離婚経験者もいて、恋愛観もさまざまに違っている。
不倫を続ける人や、他人の恋人を奪い続けるおそるべき恋愛体質の人、好きな俳優を追いかけ結婚をとりやめた人、経済力重視で3度離婚するがいまも婚活中という猛者などが出てくる。
「話を聞く相手は編集者が探して、セットしてくれました。読んでくれた人のなかだと、74歳の女性の話に興味を抱く人が多くて意外でした。もっと若い人に関心がいくのでは?って思っていたので。彼女の話は、『男と女』の話というより『女と女』の話なんですけど」
この74歳の女性は、がんの再発で余命1年半とわかった時、夫から彼女の友人と30年以上、不倫関係にあったことを告げられる。それを知った彼女がとった行動は……。
恋愛を核にして、さまざまな人生のドラマが展開していく。人に会って話を聞くという意味ではノンフィクションの形式をとっているが、完全なノンフィクションというわけでもないそう。