「みなさん、健康長寿には笑いと睡眠です。今日は大いに笑っていただいて、ぐっすり眠ってください。たとえ、面白くなくても笑うんですよ。健康のためですから」
落語家・吉原朝馬の茶目っ気たっぷりな挨拶で幕を開けた、復活版「第二回 杉友(さんゆう)寄席」。
杉良太郎が席亭を務める落語会で、11月14日に千代田区・紀尾井小ホールで行われた。厚生労働省・健康行政特別参与の杉の呼びかけとあって、落語会の題名は「笑って健康落語」。笑って健康になるための催しということで、冒頭の挨拶となった。
この日、高座に上がったのは4名。金原亭小駒が「元犬」、柳亭こみちが「麦の酒」、桂才賀が「カラオケ刑務所」、柳家小里んが「悋気(りんき)の独楽」を披露し、会場はたちまち明るい笑い声に包まれた。2児の子育て中という柳亭こみちが夫への愚痴を織り交ぜると、客席の女性たちが手をたたいて賛同する場面も。それぞれの話芸で、小さな子どもからシニア層まで、幅広い年代が集う客席をわかせた。
トリの柳家小里んまで演目を終えると、「めくり」には「健康行政特別参与 杉良太郎」の文字が。ここで席亭の杉が登場。司会を務めた吉原と目を合わせると、「こんなに長く付き合うことになるとはねぇ」と、しみじみ語り始めた。
「42年前、私が37、38才の頃に落語に興味があったんです。今は亡き古今亭志ん駒さんがドラマ『大江戸捜査網』(現テレビ東京系)のレギュラーになって、“自分は落語家です”って。“二ツ目で食うや食わずでございます”と言うのでギャラを尋ねたら、“ほとんど記憶にないくらい安いんです”と。そこでプロデューサーにかけあって、ギャラを3倍にしてもらったんです。それから真打になるまで7年ほど待ちましたかねぇ。お祝いに私から紋付羽織を贈って、裏に小さく『杉良太郎より』と入れまして。それを志ん駒さんがお披露目の席で着て、お祝いの挨拶をした先輩の落語家さんがこう言ったんですよ。“このたびは杉良太さんという方が物入りでございました”って。全国放送でね。それを見ていて、“杉良太じゃねぇ!”って。
志ん駒さんとのそんなご縁があって、二ツ目落語家さんを応援する寄席を自宅で開くようになったんです。『食えない噺家を励ます会』として皆さんを集めたのが、始まり。そして所属する団体には関係なく、まんべんなく二ツ目を推薦して、これまで100人ほど真打になりました。当時を振り返るとなつかしくてね。またやりたいなと思って、今年から復活したんです」(杉)
その後、「食えない噺家を励ます会」は「杉友寄席」と呼び名を変え、10回開催。明治座でグランプリ大会も行われ、この日、高座を務めた柳家小里んも出場していた。会場には立川談志も足を運び、大盛況だったという。当時の熱い想いを再び胸に宿して復活したのが、この令和版「杉友寄席」だ。