男性のオシッコの違和感、その原因の多くは前立腺肥大症で、尿漏れが起こることも珍しくない。前立腺があまり肥大していなくても、膀胱側に飛び出しているタイプの肥大は排尿障害が起こり得る。さらに前立腺肥大症治療をしても、過活動膀胱が原因の切迫性尿失禁に悩むケースもある。排尿障害はQOL(生活の質)に大きく関わるため、適切な診断と治療が必要だ。
男性の排尿後尿滴下(ちょい漏れ)は男性機能が正常でも加齢や飲酒などにより、尿道を締める筋肉が衰えることで生じてしまう。一方、男性の本格的な尿漏れや排尿障害は前立腺肥大症と過活動膀胱が原因だ。
過活動膀胱は膀胱の自律神経の調節異常のため、膀胱を診ただけではわかりづらい。また前立腺肥大症と過活動膀胱が併発しているケースも多い。前立腺の体積が、30ccを超えると肥大と診断される。症状の有無はケースにもよるが、肥大が軽微でも前立腺が膀胱側に飛び出している中葉肥大では40~50代でも我慢できない排尿障害が起こる。慶應義塾大学病院泌尿器科の田中伸之医師に聞いた。
「高齢化社会を迎え、隠れ排尿障害に悩む男性は膨大な数に上ると思います。他人に相談もできず、パッドで対応している方が大勢いますし。だからこそ、適切な治療が重要なんです。前立腺肥大症はまず、薬物治療を行ないますが、長期継続が必要です。その他、近年では新しい内視鏡治療の開発が進み、手術一つとっても様々な手術法が存在しています」
前立腺肥大症の新しい内視鏡手術は尿道から内視鏡を挿入、レーザーで前立腺組織を蒸散させる。組織が一瞬で気化するので、出血はほとんどなく、術後の痛みも少ない。血液をサラサラにする抗血栓薬を服用している場合でも、安全な手術が可能になった。
前立腺の蒸散で使用するレーザーは国内で主に3種類あり、この施設ではダイオードレーザーを使用してのCVP治療を実施中だ。具体的には肥大した前立腺にプローブというレーザーの照射専用機器を直接あて、出力や接触圧を調整しながら前立腺組織の蒸散を進める。蒸散で生じた空気は最終的にカテーテル経由で体外に排出される。