スポーツ

血統という概念があってこその競馬 強い馬同士の対決だけでなく、それぞれの先祖に思いを巡らせる

「僕たち調教師にとっても血統というのは馬を見るための重要な拠り所」と蛯名正義氏は語る

「調教師にとっても血統は馬を見るための重要な拠り所」と蛯名正義氏は語る

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、競走馬の血統についてお届けする。

 * * *
 GIシリーズ真っただ中、皆さんもワクワクしながら毎週末を待ち焦がれていることでしょう。その予想ファクターとして血統、特に父親である種牡馬に注目する人も多いことではないかと思います。

 たとえば世界ランク1位のイクイノックスと牝馬三冠リバティアイランドの対決が注目される今年のジャパンカップ。リバティアイランドのお父さんのドゥラメンテは、両親とも現代日本競馬を代表する名馬の家系。皐月賞とダービーを勝ちましたが、ケガのために4歳で引退。種牡馬として初年度からタイトルホルダー、2年目にスターズオンアース、そして3年目はリバティアイランドだけでなく、NHKマイルカップのシャンパンカラーや菊花賞のドゥレッツァなど、あらゆるジャンルで活躍馬を輩出しました。ドゥラメンテ自身は産駒が初めてGIを勝つ前の2021年の夏に急死。生きていればまだまだいい子を出したと思うので、本当に惜しまれます。

 一方イクイノックスのお父さんキタサンブラックは、ドゥラメンテとは同期ですが、皐月賞は3着、ダービーでは14着でした。その後GIを7勝しましたが、3200mの天皇賞(春)連覇や3000mの菊花賞などどちらかといえば長い距離中心だったので、スピード競馬全盛の時代に、種牡馬としてはどうだろうかという見方が多かったようですが、これだけのスピード馬を出しました。個人的に思ったのは、母の父である名スプリンター、サクラバクシンオーの血が流れているからではないかということ。これこそが、血統の神秘ではないでしょうか。

 血統に親しむ最初の段階としては、2歳馬の父親に注目してみてはどうでしょう。とくに現役時代の記憶も新しい新種牡馬が、どんな子を出しているかを見るのは楽しいものです。

 たとえば今年でいえば、新種牡馬の目玉はレイデオロ。ダービーと天皇賞(秋)を勝っており、その産駒はセレクトセールなどでも大人気でしたが、当初はそれほど目立った走りをした馬がいませんでした。しかし、舞台が広い東京競馬場になってからいい成績を上げる馬が増えてきた。ウチの厩舎で管理する3頭も仕上がりは少し遅れているけれど、とても楽しみです。ややコンパクトだけど、首の感じとか雰囲気がレイデオロの子だなという感じです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

現在はアメリカで生活する元皇族の小室眞子さん(時事通信フォト)
《ゆったりすぎコートで話題》小室眞子さんに「マタニティコーデ?」との声 アメリカでの出産事情と“かかるお金”、そして“産後ケア”は…
NEWSポストセブン
逮捕された元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告(過去の公式サイトより)
「同僚に薬物混入」で逮捕・起訴された琉球放送の元女性アナウンサー、公式ブログで綴っていた“ポエム”の内容
週刊ポスト
まさに土俵際(写真/JMPA)
「退職報道」の裏で元・白鵬を悩ませる資金繰り難 タニマチは離れ、日本橋の一等地150坪も塩漬け状態で「固定資産税と金利を払い続けることに」
週刊ポスト
精力的な音楽活動を続けているASKA(時事通信フォト)
ASKAが10年ぶりにNHK「世界的音楽番組」に出演決定 局内では“慎重論”も、制作は「紅白目玉」としてオファー
NEWSポストセブン
2022年、公安部時代の増田美希子氏。(共同)
「警察庁で目を惹く華やかな “えんじ色ワンピ”で執務」増田美希子警視長(47)の知人らが証言する“本当の評判”と“高校時代ハイスペの萌芽”《福井県警本部長に内定》
NEWSポストセブン
ショーンK氏
《信頼関係があったメディアにも全部手のひらを返されて》ショーンKとの一問一答「もっとメディアに出たいと思ったことは一度もない」「僕はサンドバック状態ですから」
NEWSポストセブン
悠仁さまが大学内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿されている事態に(撮影/JMPA)
筑波大学に進学された悠仁さま、構内で撮影された写真や動画が“中国版インスタ”に多数投稿「皇室制度の根幹を揺るがす事態に発展しかねない」の指摘も
女性セブン
奈良公園と観光客が戯れる様子を投稿したショート動画が物議に(TikTokより、現在は削除ずみ)
《シカに目がいかない》奈良公園で女性観光客がしゃがむ姿などをアップ…投稿内容に物議「露出系とは違う」「無断公開では」
NEWSポストセブン
長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン